第二次世界大戦後に起きた欧州最大の紛争

1990年代に起きたユーゴスラビアの内戦は、バブル真っ最中の私たち日本人には遠い国のできごととして、ピンとこない戦争でした。しかしヨーロッパでは、第二次世界大戦以来ヨーロッパで起きたもっとも深刻な戦争で、避難民が自国に続々とやってくるという身近なできごとでした。そのため各国で多くの映画が作られました。私は当時、その惨状を映画で知ったほどです(新聞では知っていましたが、実感のないものでした)。私は2015年の夏、サラエボを訪れましたが、まだ内戦の傷跡は残り、それを伝える展示や場所に旅行者がたくさん訪れていました。今回は、もしサラエボに行くなら、「これは見ておいたほうがいい」という映画を紹介します。レンタルショップにあまり置いていない作品もありますが、探してみてください。

現在のサラエボでも、壁に銃弾の跡が残っているビルがある 現在のサラエボでも、壁に銃弾の跡が残っているビルがある

包囲されたサラエボの日常を描いた『パーフェクト・サークル』

私が最初に観たボスニアの内戦を扱った映画は、1997年のフランス=ボスニア映画で、東京国際映画祭でグランプリを受賞した『パーフェクト・サークル』です。タイトルの“完全なる円”とは、周囲をぐるりとセルビア人勢力に囲まれてしまったサラエボの町を指します。映画はセルビア人勢力のジェノサイドにより、小学生ぐらいの兄弟が村を追われるところから始まります。兄は耳が聞こえないので、2人で寄り添って行きて行かねばなりません。サラエボに避難した2人は、孤独な詩人の男と知り合い、やがて家族のような絆が生まれていきます。驚いたのは、当時のサラエボでは「死と日常」が本当に隣り合わせなこと。包囲は何年も続いたので、人々は当然買い物に行ったリ学校に行ったり、川で釣りをしたりするのですが、そこに狙撃手がバンバン撃ってくるのです。買い物かごを下げたおばさんが撃たれるところは本当にビックリしましたが、あとで観たドキュメンタリーでそっくりな映像があり、実際がそうだったとショックを受けました。

ジャーナリストが見たサラエボを描く『ウェルカム・トゥ・サラエボ』

1997年製作のイギリス映画『ウェルカム・トゥ・サラエボ』は、ボスニア紛争を報道するジャーナリストの視点から描いた映画です。目の前で市民が次々と死んで行くのに、世界は何もしません。いくら報道しても何も解決できない無力さ。市民が虐殺される事件を報道しても、本国でのトップニュースは王室のゴシップです。最後に主人公はただ伝えるだけでなく、子供の命を救おうと傍観者であることから一歩前へ進みます。最近観た、チェチェン紛争の映画『あの日の声を探して』でも主人公が同じような行動に出ていました。(後編につづく)