U2とパバロッティのコラボ曲が、ドキュメンタリーのテーマに

「ギャラリー11/07/95」前編からの続きです。ビデオには当時のスレブレニツァの映像も含め、生き残った女たちの証言、遺体を掘り起こす作業、徒歩で何日もかけて山道を歩いて逃げた人々の姿が映し出されます。英語字幕ですが、それほど難しくはないし、何よりも状況があまりにもすごすぎるのでだいたいわかるでしょう。もう1本は、『ミス・サラエボ』というサラエボ包囲のドキュメンタリーです。音楽ファンなら、U2とオペラ歌手のパバロッティがPassengers名義で、ダイアナ妃追悼アルバムに収録した曲といえばわかるでしょうか。経緯はわかりませんが、このドキュメンタリーの中でこの曲が流れ、またこの曲のプロモーションビデオにこのドキュメンタリーの映像が使われていることから、テーマ曲としてU2が作ったのでしょう。

カテドラルがある広場に面したビルの上階に、このギャラリーがあります。 カテドラルがある広場に面したビルの上階に、このギャラリーがあります。

銃撃と包囲の中で行われた“ミス・コンテスト”

サラエボは1992年から96年までセルビア勢力に囲まれ、町は砲撃や銃撃に遭い、1万2000人の死者が出ました。死者の85%が市民だったことから、これも「虐殺」であったことがわかります。このドキュメンタリーも強烈です。ギャラリーのすぐ外にあるサラエボの町が攻撃に遭い、買い物に出かけたおじさんやおばさんが撃たれて行くのですから。町のメインストリートの「スナイパー通り」を、撃たれないようにみな走って渡って行く姿は、見ていて本当にハラハラします。そんな中、若者たちがミスコンをしてミス・サラエボを選ぼうというイベントを企画します。呑気に映るかもしれませんが、それが暴力に対する彼らの精一杯の抵抗なのです。このドキュメンタリーを観た場所がまさにサラエボだけに、涙が出ました。おそらくここを訪れた誰もが、同じ思いを感じたことでしょう。

写真が物語る平和。インパクトではサラエボで一番

ドキュメンタリーを観終わり、ギャラリーに展示された写真をひとつひとつ見て行きます。みな、さきほど観た2本のドキュメンタリーに関わるものです。重苦しく、無言になってしまいましたが、来て良かったと思います。たぶんこのギャラリーに行った人は、もう二度と軽々しく、戦争を口にしなくなるでしょう。また、民族主義がいかに愚かしく、一部の人に利用されるだけの口実にしか過ぎないことを知るでしょう。とにかくヘビーですが、ヒロシマやアウシュヴィッツなどと共に、忘れてはいけないことだと思います。そんな訳で、楽しい見どころではないですが、サラエボでは必見の展示です。