- 岸 博美
- 東京在住。1995年に初めてプラハを訪れ、中世そのままの街に感動。以来、毎年のようにプラハへ旅をする。2000年にプラハ以外のチェコの町を巡り、さらに2007年にまだ知らぬ町を訪れてチェコの世界遺産やその他の観光都市を網羅する。2001年以来、雑誌やガイドブックにチェコの記事を書き続けている。
出発エリアをに変更しました。
ナームニェスティー・ミールで開かれているクリスマスマーケット
旧市街広場やヴァーツラフ広場では、かなり以前から大規模なクリスマスマーケットが繰り広げられていた。プラハは一年中いつでも大勢の観光客が押し寄せる街。春から秋にかけてはカレル橋の上など、自分のペースでは歩けないほどの人混みだ。極寒の真冬でもその勢いが止まらない。クリスマスシーズンともなれば、冬のプラハは一層輝きを増してますます観光客が多くなる。旧市街広場には旧市庁舎の仕掛け時計やヤン・フスの銅像があり、祭りのシーズンでなくても多くの人が集まる所。もちろん、ここで開かれるクリスマスマーケットはプラハ最大の規模で、賑やかさは他の場所とは比べ物にならない。でも、もし2晩以上プラハで過ごすなら、次の日には他の場所へも訪れてみよう。プラハ城のマーケットも良いが、電車に乗ってヴィノフラディへ。
チェコで古くから焼かれている香辛料のクッキー、ジンジャーブレッド
ここは緑色の線で示された地下鉄A号線のナームニェスティー・ミール駅。ナームニェスティーNamestiは広場、ミールMirは平和という意味なので「平和広場」だ。地下鉄を下りて北側の階段を上がり、地上に出るとゴシック様式の大きな教会がある。教会に面しているのが平和広場で、ここでクリスマスマーケットが開かれている。新市街の外側なのでプラハの中心部からは少し離れているが、トラムの停留所もあり来やすい場所だ。プラハはカレル四世の時代、既に14世紀半ばに新市街が旧市街の外側に建設されており、新市街と言えど中世にできあがっている。ここは更にその外側でヴィノフラディVinohrady(ワインの城)と呼ばれる地区。中世では葡萄が植えられていた丘で、この地区でワインが醸造されていた。
ラベンダーなど自然素材の匂い袋もあり、良い香りが漂っている
観光客がふらっと訪れる場所ではないので、地元に密着した実用的なマーケットかと思っていたら、予想に反して垢抜けている。安ピカ物が全くないのでむしろ旧市街広場よりも洗練されている気がする。クリスマスに欠かせない要素の一つが香りだ。匂い袋と、そこに注ぐエキスだけを売る屋台があり素朴な雰囲気に包まれている。ドイツで有名なシュトレンは見当たらないが、代わりにクリスマス菓子のジンジャーブレッドが売られている。これは模様がカラフルなのでシュトレンよりずっと華やかだ。ノートや色鉛筆、ミニカレンダーなどを扱う屋台もあるが、日用品というよりセレクト文具という感じでセンスが良い。ツリーに飾るガラスボールは古くからチェコで造られていたのでガラスボールの屋台がたくさん並んでいる。
ゴシック様式の厳かな聖ルドミラ教会
ナームニェスティー・ミールのマーケットを特徴付けているのが正面の聖リュドミラ教会だ。リュドミラはボヘミアの初代国王ポジヴォイ一世の妻でキリスト教に改宗し、孫のヴァーツラフ一世に影響を与えた女性として知られている。反キリスト教徒によって殺害されたため、殉教者となりチェコの聖人に列せられた。リュドミラはプラハ城の聖ヴィート教会にあるムハ作のステンドグラスにも孫のヴァーツラフ王子と共に描かれている。由緒ある教会前で開かれているクリスマスマーケット。ここには喧噪がなく、キリストの誕生を厳かな気持ちで迎えようと準備するプラハ市民の姿が見られる。この時期、プラハを訪れるなら、旧市街からちょっと足を延ばしてナームニェスティー・ミールまで行って見よう。
チェコの文具には意外と可愛いものがある
ナームニェスティー・ミール
Namesti Miru
開催期間:11月20日から12月24日まで
時間:10:00〜19:00
アクセス:地下鉄A線のナームニェスティー・ミールより徒歩1分
トラムの10,13,16,21,22,23,91,92,97,99番でナームニェスティー・ミール下車徒歩1分
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