黄金の国と呼ばれていたヌビア

エジプトの南からスーダンのハルツームにかけてのナイル川流域は、古代から「ヌビア(黄金)」と呼ばれていました。ヌビア地方には、アラブ人とは異なる風貌を持つ人たちが古代から住み、商人や奴隷、傭兵の姿で、多くの遺跡にレリーフとして描かれています。紀元前8世紀には70年に渡って3人のヌビアの王が、黒いファラオとしてエジプトを治め、第25王朝を築きました。ヌビア人は、肌が黒く縮れた髪を持ち、アラブ人でもアフリカ人でもないヌビア人としてのアイデンティティーに誇りを持つ人たちです。明るく人懐こくてホスピタリティに富み、わたしたち旅人を温かく迎えてくれます。

エジプト・誇り高きヌビア人の住む地方を訪れる旅 エジプト・誇り高きヌビア人の住む地方を訪れる旅

ヌビア遺跡の白眉アブシンベル神殿

アスワン・ハイダムの建設によってダムの底に沈んでしまう危機にあったアブシンベル神殿を、分割して200km離れたところに移築した話は、昔、教科書に載っていましたね。そして、ユネスコの協力によって行われたこの大規模な工事がきっかけとなって、遺跡や自然を保護する目的で世界遺産が創設されたのです。アブシンベル神殿を訪れるツアーは、飛行機で朝訪れ、数時間の滞在のみで戻ることが多いです。しかし、数時間の滞在だけではもったいない! 日帰り客が帰った後の神殿は、ほとんど貸しきり状態になります。また、夜の光と音のショーが一見の価値ありのおもしろさ。遺跡でのんびり過ごして1泊することをおすすめします。

ヌビア人の帆船「ファルーカ」に揺られる

ヌビア地方の町アスワンには多くのヌビア人が暮らしています。ヌビア人が操る白い帆かけ舟「ファルーカ」が、風に乗ってナイル川の水面を滑るように進んでいく様は異国情緒たっぷりです。旅行者に人気なのが、このファルーカでのクルーズ。ヌビア人の村があるサヘイル島を訪れたり、エレファンティネ島を一周したりすれば、心地よいナイルの風を体中で感じられます。またアスワンからルクソールまでの各遺跡に寄りながら、2泊3日で下るツアーもあります。ヌビア人のキャプテンやスタッフ、旅人たちとのんびり過ごす3日間、悠久のエジプトを肌で感じてください。

ヌビア人をもっと知ろう

アスワンでは、昔ながらのヌビア人の村を訪れてみましょう。ヌビア人は西岸に多く住んでいます。家の壁にはヌビア特有の絵が描かれ、魔よけのワニの剥製が家の玄関に飾られるなど、彼ら独自の習慣と文化が今でも色濃く残っています。アスワン文化センターでは毎晩ヌビアの舞踊と音楽のパフォーマンスが見られ、またヌビア博物館では、エジプト史のなかでのヌビアの歴史が、考古学的な遺物を通してわかりやすく展示されています。ここはアスワン・ハイダム建設による遺跡の水没からの救済の資料や、アブシンベル神殿の移築前・移築後の比較も興味深く、ヌビア地方を知るうえで、訪れる価値のある博物館です。