カンヌから行ってみたい町

映画祭ですっかり有名になった南仏のコートダジュールにあるカンヌは、今や高級リゾート地です。かつてはニースこそが第一のリゾート地でしたが、今ではカンヌのほうが上でしょう。夏ならば、入場料を払ってでも、セレブ達に混じってプライベートビーチで過ごせば、気分だけでもリッチになります。ただしカンヌには、ニースのマティス美術館やシャガール美術館などのような見所があるわけではありません。近郊をまわるのが楽しいのです。今回のテーマはピカソ。山の中の小さな町ヴァロリスに行ってみましょう。カンヌ駅前から1時間に1本くらいの割合でバスが出ています。18番のバスで約30分。市庁舎前の広場にはちょっとヘンテコな陶製のアートがあり、町の街路には茶色い大きな陶器に木々が植えられています。陶器の町らしく、何軒も陶器の土産物店が軒を連ねています。

ピカソが愛した南仏の町ヴァロリスとは? ピカソが愛した南仏の町ヴァロリスとは?

ピカソの創作意欲に火をつけたを陶器の町

ヴァロリスの陶器は、太陽の燦々と輝く南仏ならではの色づかいです。ピカソが作った陶器のレプリカも販売されています。これらレプリカを一手に焼いているのが、この町のマドゥーラ窯です。1946年、ふと立ち寄ったこの町の陶器市で、ピカソは三点の作品を作りました。現地の職人がこれをマドゥーラ窯で焼き、1年後に訪れたピカソに見せると、ピカソの創作意欲に火がついて、この町にアトリエを構えることに決めたのでした。7年間この町に暮らします。当時のアトリエがフルナス通りに残されています。その間ピカソは3000点以上の陶器を作り、パリで展覧会を開くと、瞬く間にヴァロリスの名前がフランス中に広がったのです。そして衰退していた陶器産業も、観光客が訪れることで息を吹き返し、また陶芸家たちはピカソに触発されて、芸術的な作品にもチャレンジするようになったそうです。

傑作「戦争と平和」を観に行く

一人の天才芸術家が、南仏の小さな町を一変させたのでした。ピカソ70歳の誕生日には、町を挙げてお祝いしてもらいます。その返礼として、ピカソが取りかかった作品が「戦争と平和」です。ヴァロリス城を訪れてみましょう。まずはピカソの彫刻「羊を抱いた男」が迎えてくれます。もともとは12世紀に建てられた修道院が改装されたルネサンス様式の城館です。国立ピカソ美術館があるのは礼拝堂です。ここは彼の70歳の誕生日パーティーが催された場所で、その返礼として描かれたのが傑作「戦争と平和」です。蒲鉾型の室内には、左側に戦争の絵、右側に平和の絵、中央に地球のような球体を抱えて手を結ぶ人の姿が描かれています。スペインにある「ゲルニカ」は紛れもない名作ですが、この「戦争と平和」も必見だと言われています。彼はこの礼拝堂を「平和のテンプルにしたい」と語っていたそうです。