暗さを効果的にあやつる大聖堂の魅力

大きな教会へ入っていくときに私はいつも感じるのですが、明るい陽光がいっぱいの屋外から一歩中に入ったときの、劇場のような視覚的効果には「すごい!」と思いませんか。一瞬視力を失い、やがて暗さに慣れてフッと見える正面のステンドグラス。浮かび上がるマリアやキリストの立像。心を持っていかれる瞬間です。これがたまらないから、教会を見るとキリスト教徒ではないのに中に入ってみたくなるのです。

珠玉のキリスト教建築、シャルトル大聖堂へ(後編) 珠玉のキリスト教建築、シャルトル大聖堂へ(後編)

「ラビリンス」をさがせ!

さらに胸をどきどきさせたのは、暗い堂内の床に、黒大理石とベルシェール産の色石を組み合わせて描かれた「ラビリンス」でした。ラビリンスとは「迷路」とか「迷宮」といった意味ですが、もとは「聖地エルサレムへの困難な道のり」を象徴するものだといいます。エルサレムへの困難な道のり……その言葉だけでも魅力的ですが、この大聖堂のラビリンスは約1200年ごろに造られたものが、当時から一度も修復されていないまま現存しているというのですから、見たくないわけがありません。

自力でラビリンスを見つけて、興奮が抑えきれませんでした

しかし!堂内をいくら探しても、ちっとも見つかりません。そんなはずはない、と焦って早足であちこち歩き回り、身廊に戻って途方に暮れ、ふと足元を見下ろしたとき、「……ここだったのか!」ラビリンスは、ちゃんと身廊にあったのです。気づいた瞬間、足元からザワザワと立ち上るような感動を覚えました。身廊は最初に見ていたのですが、写真では床になにも置いていなかったのに、実際は椅子がぎっしりと置いてあったため、初めからここではないと思い込んで勝手に飛ばしていたのです。巡礼者たちは、エルサレムへの巡礼の象徴として、全長261.5mの円形の迷路を、祈りを捧げつつたどっていくということです。あとで、東側の庭の芝生も同じ模様で刈り込まれている写真を見ました。季節によっては青々とした屋外のラビリンスを楽しむこともできるようですね。

田舎があってパリが輝き、パリがあって田舎が輝く

建物、彫刻、ステンドグラス、そして文字通り(見つけるのが)困難な道のりだったラビリンス。ゴシック全盛期に建てられた大聖堂のうち、それらがほぼ完全に残っているのは、フランスではここシャルトルだけだといいます。存在自体がドラマチック、それがシャルトル大聖堂です。そして私は、シャルトルを始めとしてフランスの田舎をまわってみて初めて確信しました。広大なフランスの地、広大な田舎があってこそのパリだ、と。フランスの最先端のデザインは、田舎の土くれとキリスト教会から、連綿とつづいている、と。さあ、フランスの小さな教会や大きな大聖堂を見に、パリを飛び出して出かけましょう。