- 夏樹
- 音楽修行に渡仏し20年。教会オルガニストとして活動する傍ら、日本の女性誌やWEBにフランスの新鮮な話題を常時発信。在仏日本人向けコミュニティー誌「Bisou」や、海外で活動するライター仲間が集るメルマガ「地球はとっても丸い」の編集にも携わる。
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左側にも塔があったのですが、19世紀に壊れて落っこちてしまいました。グスン……
今は、サン・ドニというとサッカースタジアム。でも、ここにはフランスに現存する大聖堂の中でも一番古い、サン・ドニ大聖堂があります。3世紀、まだパリがローマ帝国の支配下にあったころのことです。聖人サン・ドニはキリスト教を広めにパリにやってきますが、当時、キリスト教はまだごく小さな信仰宗教で、布教を禁止されていました。そこで、サン・ドニはモンマルトルの丘で首切りの刑に処されます。でも、そこは聖人様、自分で切られた首を手に持って、郊外にあった墓地まで歩いて行ったということです。もちろん伝説であってほしい……
見てください、この曲面天井!
その墓地跡が、ここ。7世紀、ダゴベルト王がサン・ドニを偲んで、ここに教会を建てました。この時代から、サン・ドニはフランスの守護聖人として篤く信仰されるようになり、以来、フランスの王様王妃様は、数人の例外を除いて、みな、ここに埋葬されています。12世紀、ルイ7世の治下、サン・ドニ教会は大幅に改築増築され、大聖堂に昇格。当時、フランスは、ヨーロッパの他の国々をおさえつけ、大国としてのしあがっていく過程にありました。「もっと輝きたい!」、国としてのそんな野望が、「ステンドグラスから射す光でいっぱいの大聖堂」として体現され、ゴシック建築の第一号になったというわけです。
ステンドグラスは、19世紀に修復されたものもありますが、ほとんどは12世紀のままの色
ステンドグラスは、聖書物語のいわば漫画版だって、ご存知ですか? 文盲がほとんどだった時代のこと、聖書を読めない人も、キリストの教えがわかるようにと作られたので、「貧乏人の聖書」とも言われました。それから見逃せないのは、歴代の王様の埋葬彫刻。地下には、マリー・アントワネットのお墓もあります。フランス革命時、その息子、ルイ17世は7歳、幼少だったにもかかわらず3年間牢獄につながれ、10歳で病死したそうです。その心臓をおさめた壷も、ここに安置されています。
親父たちの元気をもらって帰ろう
日曜日の朝10時のミサでは、大オルガンの演奏を聞くことができます。11時からはコンサートも。そして、外に出ると、とっても庶民的な市場が開かれています。食料から衣類まで、あまり安いのでパリから大きな籠をもって買い出しに来る人々も多いんですって。お澄まししたブルジョアおばさまたちの集る7区の市場もおもしろいけれども、庶民パワーの炸裂するサン・ドニ市場も見逃せない! 聖なる大聖堂と俗なる市場、このふたつを楽しめるサン・ドニ、みんなが行かないところにも行ってみたいあなたに、ぜひ、おすすめします!
首を切られて、その首をもって歩き出すサン・ドニ聖人
■ Basilique cathedrale de saint-Denis
住所: 1 rue de la Legion d' honneur, 93200 Saint-Denis
メトロ: 13番線 Basilique de Saint-Denis下車徒歩3分
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2008/03/10)
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