- 吉田 久美子
- スペイン(バルセロナ)在住。秘境・辺境、苦難を伴う旅が好きな、ヘタレなアウトドア派です。旅した国は80か国以上。世界のお酒と居酒屋をこよなく愛し、現在はガイドとして、日本のお客様にスペインのバル文化の素晴らしさをお伝えすべく、連日連夜バルを渡り歩いています。モットーは『人生は旅なのだ!!』です。
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ヨーロッパで楽しむ東洋美術 その1「パリ・ギメ東洋美術館」
アジアや中東が大好きです。スペインで暮らし、旅といえばヨーロッパ圏内になりがちなこの頃。遠いアジアや中東の空気を渇望している自分に気づいたら、私はヨーロッパにある東洋美術の充実した美術館を訪ねます。ロンドンの大英博物館は世界中の蒐集品を詰め込み過ぎで、一日見ていると疲れ果ててしまいますが、他にもヨーロッパには、優れた東洋美術を収蔵する美術館がいくつもあります。どの美術館も専門の分野に特化していて、展示の仕方にはヨーロッパならではのセンスが感じられます。現地の国宝級の文化財を持ってきているので、内容も非常に充実していて、見ごたえがあります。
パリの「ギメ東洋美術館」は、古代エジプトからアジアに至るまでの宗教博物館を作るという夢を抱いた実業家エミール・ギメが、自らアジア各地を訪れた際に収集した遺物や美術品を元に誕生しました。1945年にルーブル美術館所蔵のアジア美術品がすべてこちらに移されて以来、ルーブル美術館の東洋別館の役割を果たしているといってもいい、世界有数の東洋美術コレクションを誇る美術館です。私はパリを訪ねると必ずここに立ち寄るようにしています。ルーブルやオルセーほど混雑しておらず、ヨーロッパ人の目で選び抜かれた東洋美術の一級品をゆっくりと間近で堪能することができて、何度訪れても飽きない素晴らしい美術館だと思います。
フランスはかつてインドシナ半島の国々(カンボジア、ベトナム、ラオス)を植民地としていたこともあって、ギメ美術館では質・量ともに世界有数のアンコール遺跡の美術品を所蔵しています。私が訪れた2013年の年末には、常設展に加えてアンコール美術の企画展も催されていて、入場制限が行われるほど多くのフランス人で賑わっていました。展示されているものは超一級のものばかり。仏像やアンコールを築いた王の像の、ちょっぴり口角を上げただけで表現された穏やかな微笑や、寺院の壁に施されていた複雑で繊細なレリーフの美しさに、同じ東洋の血を持つ者として誇りすら感じます。
ギメ美術館を訪れるたびに『展示の仕方がセンスいいなあ』と感心させられます。アンコールのレリーフは彫りの細かさが際立つようにライトが当てられ、アフガニスタンのガラスの魚は泳いでいるように、中国の馬の像は飛び跳ねているように、躍動感いっぱいに展示されています。ガラスケースに入ったチベットの仏像は、宝石店のショーウィンドウのように光が当てられて、ほの暗い室内に浮かび上がって見えます。どの美術品も、どう展示したら最も美しく見えるかが考え尽くされているようです。パリで見る東洋美術は、そのものの持つ本来の素晴らしさにフランス人のオリエンタリズムが加えられた、ひと味もふた味も違った魅力がいっぱいです。
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2014/07/13)
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