見えない銅像を想像で見るのも楽しい

ドイツにはふたつの大河が流れています。ひとつはドイツに源流を持つドナウ川。これが東へと流れ、スイスアルプスのトーマ湖を源流とするライン川が北に流れています。ライン川のマインツとコブレンツ間は、名勝であるローレライの岩や、幾多の古城が見られることから、川下りで有名で、たしかに優雅にクルーズを楽しめます。そしてコブレンツで合流しているのがモーゼル川です。合流点をドイチェス・エック(ドイツの角)と呼びます。まるで軍艦の穂先のような独特の角地が伸びており、ここにはかつて、ドイツ帝国皇帝、プロイセンのヴィルヘルム1世の銅像が建てられていました。その高さは4、5階建てのビルほどもあったとか。第二次大戦で要塞と間違えた米軍に、砲撃で吹き飛ばされてしまって、今では台座だけが残されています。このあたり、眺めのいいところです。

おいしい貴腐ワインで、美しきモーゼル川に乾杯 おいしい貴腐ワインで、美しきモーゼル川に乾杯

美しきモーゼル河畔はブドウ畑が美しい

このコブレンツからコッへムまで5時間のクルーズが出ています。日本のようにコンクリートの護岸工事などなされておらす、水際まで芝生が生えているようなところが多く見受けられます。自然美がいいですね。ライン川との違いは、その川幅です。雄大さはありませんが、急に蛇行した箇所が多いので、異なった角度から景色を堪能できます。両側には丘陵が続き、南向きの斜面には、ブドウ畑が広がっています。のどかで、どこまでも明るく澄みきった風情がモーゼル川の魅力です。ここで栽培されているのがリースリング。白ワイン用のぶどうの品種です。モーゼルワインは、白と相場が決まっているのは、この品種を多く栽培しているからです。モーゼル河畔のおおよそ130もの村々は、どれも小さいながらに美しく、ワインの醸造所も点在しています。

中世の町ベルンカステルで一杯

モーゼルのリースリングは、若々しい味が特徴で、爽やかな酸味の利いた白ワインです。持ち手が緑色の渦巻き状で、ずんぐりとしたあまり背の高くないワイングラスで飲みます。これはお土産にもいいですね。このモーゼルワインで名高いのが「ベルンカステル・ドクトール」。14世紀にトリア―司教の病気を治してしまったという伝説のワインです。このワインは、霜が降りるまでブドウを収穫せず、貴腐菌が付いてから収穫したブドウで作ったワインで、日本では貴腐ワイン、ドイツでは、「エーデルフォイレ (Edelfaule) 」と呼んでいます。リースリング特有のさわやかな酸味と、抜群の甘みが深い味わいで、食後酒として楽しみます。またベルンカステルは木組みの家々が建ち並ぶ中世の町のよう。小さくてとてもきれいです。この町のワイン居酒屋で、ドクトールを一杯どうでしょう? 甘口ですから飲みやすく、じんわりとした味わいです。