- Kei Okishima
- ライター。早稲田大学第一文学部卒業。ドイツには高校時代に国際ロータリークラブ青少年交換留学でバイエルン州に一年間、大学時代に交換留学でベルリン自由大学、フンボルト大学に一年間留学する。その後ドルトムント大学にてジャーナリズム学科を専攻。現在はフリーライターとしてヨーロッパを中心に活躍中。
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ルターが論題を張り出した扉のある宮殿教会。前方からやさしく入り込む光が印象的
「1517年10年31日、マルティン・ルターは95ヶ条の論題を教会の扉に貼り出した」特に宗教改革に興味がなくても、このインパクトのある一文には聞き覚えがあるだろう。16世紀にヨーロッパを揺るがした宗教改革の始まりである。この扉とはドイツ・ヴィッテンベルク(Wittenberg)にある宮殿教会の扉であり、世界遺産として今でも大切に保存されている。この教会は戦争の度に一部焼失するなどの被害を受けるが、1885年に大掛かりな修復作業が行われ、今尚美しい姿で私たちを迎えてくれる。
テーゼの門。ここに張り出したテーゼがその後社会問題に発展することになる
この95ヶ条の論題とは、ルターが免罪符に対して疑問を抱き、抗議するためのものであった。なぜ教会の扉に張ったのかというと、この教会が大学教会を兼ねており、扉がいわゆる掲示板の役割を果たしていたからだ。テーゼの扉と呼ばれるこの扉は建物の真ん中に位置し、遠くからでもすぐに見分けがつく。この場所から始まった深い歴史がある。まさかこれがカトリック教会のみならず、そしてヨーロッパ全体に影響を及ぼす程大きな事件になるとは、ルター自身が想像していなかったに違いない。外観の威圧感に圧倒されながら中に入ってみると、内部は想像していたよりも小さめな印象を受ける。しかし正面のステンドグラスから入り込む柔らかな光がゴシック様式のアーチ型天井をやさしく包み込み、教会全体のイメージを温かくしている。この宮殿教会には今でもミサの時間になるといかにも家事の合間に来ました、というラフな格好の人々が何処からともなくやって来て、急ぎ足で教会に入っていく。観光のためではなく、地元に根付いた教会として今日も生き続けていることに、じんわりと感動を覚える。
市庁舎のあるマルクト広場。駅から歩いて20分ほどだが、駅前から広場までのバスも出ている
ヴィッテンベルクにはこの他にも沢山の見所がある。まず町の中心になるマルクト広場にはルネサンス様式の市庁舎が建つ。この市庁舎は行政、司法機関として使われていた時代、また職人が広間で商いをするのにも使われていた。そしてこの広場に立つ2つの銅像が、宗教改革に大きく携わったルターとフィリップ・メランヒトンである。メランヒトンについて興味のある人は、彼が住んだ家を見学することも出来る。
クラナッハの家であるシュロッス通り1番地の中庭。コの字型の中庭が特徴的
この町で暮らしたもう一人偉大な人物がいる。それは画家のルーカス・クラナッハである。ルターの肖像画、としてよく見かける絵もクラナッハの作品だ。町中にあるマリーエン教会はこの町で最も古い建築物であり、ここにはクラナッハとその息子が描いた宗教改革に関する絵画が残されている。特に宗教改革祭壇画は宗教改革に関することは勿論、当時の人々の暮らしぶりも伺える傑作である。クラナッハは当時この町にいくつかの屋敷を所有しており、今でもマルクト広場4番地とシュロッス通り1番地がクラナッハの家として残されている。16世紀、自分の信念を持って強く生き抜いた人々が暮らした町ヴィッテンベルグ。この小さな町に潜む大きな力の根源を確かめに行ってみてはどうだろうか。
※ヴィッテンベルク(Wittenberg)へのアクセス方法
ベルリン中央駅から急行で約40分
■ Schlosskirche 宮殿教会
Schlossplatz
電話:(+49) 3491 40 25 85
4月〜10月 月〜土 10:00〜18:00、日 11:30〜18:00
11月〜3月 月〜土 10:00〜16:00、日 11:30〜16:00
■ Melanchthonhausメランヒトンの家
Collegienstr. 60
電話:(+49)3491 403279
4月〜10月 月〜日 10:00〜18:00
11月〜3月 火〜日 10:00〜17:00
入館料:2,50ユーロ
■ Stadtkirche 市教会
電話:(+49)3491 403201
4月〜10月 月〜土 10:00〜18:00、日 11:30〜18:00
11月〜3月 月〜土 10:00〜16:00、日 11:30〜16:00
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2008/03/17)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
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