二本のドイツ映画で知った旧東ドイツのシュタージとは

私が好きなドイツ映画のひとつ『善き人のためのソナタ』は、東ドイツ時代の国家保安省(秘密警察)シュタージの局員が、反体制派の疑いのある劇作家と女優を盗聴し、徹底的に監視するというストーリーでした。シュタージの局員の目を通して監視国家の真実を描いた『善き人〜』に対し、『東ドイツから来た女』は、シュタージの監視の目をかいくぐって、恋人の待つ西ドイツに脱出しようとする女医が主人公です。女医(エリート層)がちょっとどこかに寄り道をして帰宅が遅れただけで、シュタージによる家宅捜索や身体検査が何度も行われ、こちらも旧東ドイツの病んだ体制が伺える映画でした。

監視と密告の社会にゾッとする。旧東ドイツ国家保安省(シュタージ)ミュージアム 監視と密告の社会にゾッとする。旧東ドイツ国家保安省(シュタージ)ミュージアム

博物館として公開されている秘密警察本部

ドイツ社会主義統一党による一党独裁の国家を維持し、社会全体を国家の監視下に置くために必要不可欠だった秘密警察・諜報機関シュタージ。正規職員9万人の他に、18万人の公式協力者がいて、人知れず家族や友人、同僚のことをシュタージに密告していたそうです。ベルリンにある旧東ドイツ国家保安省「シュタージ」の本部は、現在は博物館として公開されています。広い敷地内には色気のない大きな建物が17、8棟あり、当時はすべてシュタージの本部や職員の住宅に使われていました。博物館になっている建物もいかにも社会主義国といった無機質で冷たい感じのする外観です。

監視カメラや盗聴マイクの仕込みにびっくり

2階に上がると、当時の様々な諜報小道具が展示されていました。こんなものにまで?と思うようなものに盗聴器や隠しカメラが仕込まれています。かばんや腕時計、万年筆なんかはスパイ映画でもおなじみですが、ネクタイやドラム缶、木の切り株の中、ジョウロやゴミ箱の中まで、あらゆるもの、いたるところに盗聴器や監視カメラが内蔵されているのには、見ているうちに半ば呆れてしまいました。でも、家族も友人も信じることのできない、安心して道も歩けないような監視の目を恐れて生きた当時の人々の暮らしを思うと、なんともやりきれない気持ちになりました。映画『善き人のためのソナタ』に出てきた“体臭を保存したサンプル”も展示してありました。

質素だったシュタージのトップの執務室

上の階に進むと、そこは約30年の長きにわたって国家保安大臣、すなわちシュタージのトップに君臨していたエーリッヒ・ミールケの執務室や会議室があります。1989年まで実際に政府機関として機能していた部屋がそのまま保存されているのですから、なんだか人の気配が残っているような生々しい空気が漂っています。執務室の奥にはここに泊まれるようにキッチンや寝室、浴室も見えましたが、どこも思ったよりずっと質素でした。誰にも富も幸福ももたらさない相互監視国家だった旧東ドイツの、負の遺産ともいえるシュタージミュージアム。ドイツ語の説明だけですが、是非足を運んでみてください。