- 神谷
- 東京都在住。漫然とさすらっていた学生時代の旅から、テーマのある旅へとスタイルが移りました。現在は「その国と日本とのつながり」を頭に置いて旅をしています。地を這う旅からリゾート、自然観察、文学、アート、建築を追う旅までなんでもテーマにして書きます。旅と同じくらい文章を書くのが大好き。お楽しみに!
出発エリアをに変更しました。
入り口を入ると、もう駅としか言いようがない……
駅が美術館に生まれ変わった例といえば、パリのオルセー美術館が有名ですよね。ベルリンにも、オルセーのように美術館となった元駅舎があります。「ハンブルク駅現代美術館(ハンブルガー・バーンホフ)」は、ベルリン中央駅から徒歩7分ほどのところにある美術館。オルセー美術館の所蔵品が19世紀美術を専門としているのに対し、ここは名前のとおり現代美術を専門とする美術館であることが特徴です。
ところどころに残る、駅らしさ
堂々とした豪華な建物は、まるでクラシックホテルや歴史ある国立博物館のような雰囲気。この中に現代アートの展示があるとは信じられないような気がしますが……。建物の中に一歩入ってみれば、「本当に駅だ!」と思わず声が上がりそう。鉄骨造りの駅舎と車庫は、19世紀の面影を随所に残しながらも第二の人生を心から楽しんでいるようです。ここは、改築や増築を重ねて現在は1万平方メートル以上もの床面積を有する、世界最大級の現代美術館なのです。
大人気の企画展示
常設展示にはアンディ・ウォーホル、ヨーゼフ・ボイス、マリオ・メルツ、アンゼルム・キーファーなど錚々たる名前が並びます。さらに企画展も、体験型展示を含む大掛かりなものがずらり! 私が訪問したときには、ちょうど「エミール・ノルデ展」が開催されていました。ナチスによって「退廃芸術」と認定され激しく迫害された作家ノルデが、実は熱心なヒトラー信奉者だった、というショッキングな事実が2013年に発表されてから、ドイツ国内でノルデは再注目の的に。この日も、会場に詰めかけたドイツ人見学者が解説を熟読する姿が印象に残りました。
車庫を利用した大掛かりな展示
広大な展示空間を歩き、昔は駅だった片鱗を拾いながら現代アートを楽しむのは、他の場では決してできない経験です。だだっ広いとも言える巨大な屋内空間。新設の美術館ではこれほど贅沢な室内を作れないでしょう。それがまた、現代アートと相性がいいんですね。現代アートは大きな作品が多いので、そのアートが大きな展示空間に置かれると非常に映えるのです。
長い長い通路、行きはただの電灯に見えて、さて帰ろうと振り向くとEXITの文字が。これもアート。タイトルは「NO EXIT」。たしかに永遠に続くかのように見える。
激動の時代を生き抜いたこの建物の歴史をふりかえってみましょう。ハンブルク駅現代美術館は、ベルリンとハンブルクを結ぶ鉄道駅として1840年代に建てられたものの、たった40年ほどで駅としての役割を終えました。そして1900年代初頭には、すでに博物館や美術館として生まれ変わるべき工事が始まっていました。世界各地で近年流行している、“古い建物を別の目的に利用する”ムーブメントとは年季が違いますよね。
昔の駅舎らしい味わいのある室内
第二次世界大戦とその後の東西ドイツ分断のせいで停滞したものの、統一後の1996年には現在の美術館が開館しました。平和があってこその、この建物です。ここに来れば、こんなに素晴らしい建物が完璧な形でコンバージョン建築としてよみがえったことに、しみじみと感動しますよ!
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2020/11/10)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
提供情報の真実性、合法性、安全性などについては、ご自身の責任において事前に確認して利用してください。
エイビーマガジンについて