- 沖島博美
- 東京在住。 旅行作家。ドイツの民俗、歴史、文化などを取材し、書籍や雑誌で紹介し続けている。主な著書に『グリム童話で旅するドイツ・メルヘン街道』(ダイアモンド社)、『北ドイツ=海の街の物語』(東京書籍)、『ベルリン/ドレスデン』(日経BP),『ドイツ〜チェコ古城街道』(新潮社)、『ドイツ・クリスマスマーケット案内』(河出書房新社)など他多数。日本旅行作家協会会員。
出発エリアをに変更しました。
ドレスデン城の目の前にあるホテル・タッシェンベルクパレ・ケンピンスキー
ザクセンの名物王と言われた選帝侯フリードリヒ・アウグスト一世。怪力だったことから強王のあだ名が付き、アウグスト強王として知られている。あちらこちらに話題を残し、アウグスト強王なしでは語れないドレスデン。彼の足跡を辿って旅をすれば、ドレスデンの面白さも倍増するであろう。ドレスデンはザクセン選帝侯の本拠地だった美しいバロックの町で、見所も多い。その魅力を探るために滞在するホテルがアウグスト強王ゆかりの館となれば、旅は一層おもしろさを増すであろう。ご紹介したいのはドレスデンの中心部にある高級ホテル、タッシェンベルクパレ・ケンピンスキー。ケンピンスキーはベルリンで誕生したドイツの高級ホテルだ。この建物は外観、風格、内部の豪華さなど、まさにケンピンスキーならではのもの。
ロビーは重厚だが、堅苦しい雰囲気はない
タッシェンベルクパレは1708年、アウグスト強王の公妾コーゼルのために建設された。その当時は小規模な館だったが、コーゼルの失脚後は増築が繰り返され、最終的に今日の様な大宮殿になった。1945年2月のドレスデン大空襲で破壊され、外壁が残ったまま放置されていた。ドイツ統一後の1992年から修復工事が始まり、オリジナル部分を保存しながら1995年に完成。ケンピンスキー・ホテルとしてオープンした。目の前はドレスデン王宮のレジデンツシュロス、隣はツヴィンガー宮殿という、ドレスデン観光で人気トップ2つがどちらも道を渡ったところにあるのだ。旧市街の見所は全て徒歩で周れるが、新市街の方へ行くならトラムの停留所が直ぐ傍にあるので便利。夜は斜め前にあるゼンパーオーパーで音楽やオペラ鑑賞を。素晴らしい立地である。
建物の中央部分にあるオリジナルの「階段の間」
ホテルの中ほどに「階段の間」と呼ばれる立派な階段がある。中庭へ出る扉の前に、左へ、右へ、2カ所に上へあがる階段があり、どちらも途中から二手に分かれて2階へと続く。つまり2階には一カ所に4つも降りる階段があるという構造だ。こんなにたくさん一カ所に階段は要らないだろう、と思うが、「階段の間」は主(あるじ)の富の象徴。訪問客は立派な階段に驚き、その家の豊かさを知る。この階段はタッシェンベルクパレの建物内部では唯一破壊を免れており、コーゼルの時代の面影をしのぶことができる場所である。レストランは階段先の1階にあり、ビュッフェ式の朝食を楽しむことができる。ドイツの人々が好きなシリアル系もハムやチーズ、ヨーグルトなども種類が豊富で、見ただけでその質の良さが判る。ここでの朝食タイムは至福の時だ。
ホテル1階のKarl May Barはザクセンの人気作家カール・マイ(1842 - 1912)に因んだ高級バー
客室はどの部屋も広く、木彫家具がほとんどでクラシックなインテリアだ。ベッドは大きくて寝心地が良い。ここに宿泊した著名人たちは数知れない。コール首相、シュミット首相、シュレーダー首相など、歴代ドイツの首相たちが宿泊しているのはもちろんのこと、アメリカのオバマ大統領、ロシアのプーチン大統領、フランスのシラク大統領といった政治家、ヨーロッパの王侯貴族たち、そのほかに世界的に有名な芸術家、作家、音楽家など、まさにここはドレスデンの迎賓館である。レジデンツシュロスからホテルの3階部分に架けられた通路跡があるが、これはアウグスト強王がコーゼルに直ぐ会えるように架けたと言われている。ここも奇跡的に破壊を免れ、戦後半世紀近くこのままの状態だった。強王とコーゼルに思いを馳せて、思う存分ドレスデン滞在を楽しもう。
広さはカテゴリーで異なるが、家具などインテリアはほとんど同じ
ホテル・タッシェンベルクパレ・ケンピンスキー・ドレスデン
Hotel Tschenbergpalais Kempinski Dresden
住所:Taschenberg 3. 01067 Dresden
電話:+49 351 4912 0
客室数:213
宿泊料:季節や曜日によって異なるが、
ハイシーズンの目安は1人200ユーロ前後(朝食付き)〜
※ネットでの早期申し込みは割安になる
https://www.kempinski.com/de/dresden/hotel-taschenbergpalais/
アクセス:ドレスデン中央駅より旧市街へ向かって徒歩20分
クレジットカード:Visa, Master, JCB, Amex, Diners,
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2020/03/02)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
提供情報の真実性、合法性、安全性などについては、ご自身の責任において事前に確認して利用してください。
エイビーマガジンについて