- Kei Okishima
- ライター。早稲田大学第一文学部卒業。ドイツには高校時代に国際ロータリークラブ青少年交換留学でバイエルン州に一年間、大学時代に交換留学でベルリン自由大学、フンボルト大学に一年間留学する。その後ドルトムント大学にてジャーナリズム学科を専攻。現在はフリーライターとしてヨーロッパを中心に活躍中。
出発エリアをに変更しました。
本当にいばら姫が眠っていたかのような古い塔
カッセルとハノーファーの間の丘陵地帯はヴェーザーベルクランド(ヴェーザーの丘陵地帯)と呼ばれ、北海へ流れ出るヴェーザー川が造り出した渓谷と小高い丘が連なっている。自然保護地域に指定された森の中に小さな古城が点在し、まさにおとぎ話の舞台のようだ。グリム童話の『いばら姫』やディズニーの『眠れる森の美女』で知られる物語は、糸紡ぎ車に刺されて100年の眠りに陥る姫の話。ある日、王子がいばらで覆われている城へやってきて塔の上で眠っていた美しい姫を見出す、というストーリーだ。その物語の舞台とされているのがメルヘン街道沿いにあるヴェーザーベルクランドのザバブルク城である。
客室は広さやインテリアが異なる
ザバブルク城は14世紀にマインツの大司教が巡礼者を保護するために建設した城である。巡礼者たちを匿ったため、奥深い森にある円錐形の小山の頂きに建てられた。15世紀末に城はヘッセン方伯の手に渡り、16世紀からは狩りの城として使われた。19世紀には一時ヘッセン侯爵の傍系の居城だったこともある。第一次世界大戦後はヘッセン州の管理下に置かれるが、そんな由緒ある城が突然「いばら姫の城」となったのは、ザバブルク城の周りにいばらの生け垣があったからである。人里離れた森の奥の小山にひっそりと佇むザバブルク城の姿は、まさにメルヘンの城そのものだった。今もバラの季節になると蔓バラが城の周りで花を咲かせている。
階段の上り口に置かれた糸紡ぎ車
ザバブルク城は1957年から個人の所有となりレストランが開設された。その後まもなく古城ホテルになった。わずか17室というこぢんまりしたホテルだが、どの部屋からも遠くの野や森が見渡せる。中世の城では母屋に城主や騎士たちが集う広間や食堂があり、翼や離れに家族が暮らすケメナーテと呼ばれる館が、そして見張りのための塔がいくつかあった。ザバブルク城では母屋に宴会場やレストランがあり、ケメナーテと塔の上に客室がある。城の前には見晴らしの良いガーデン・テラスが設けられ、季節の良い時期はレストラン&カフェになっている。メニューには『いばら姫』に因んだ名前の料理やケーキもあり、夜10時頃まで明るい夏場はここで遅くまで人々が寛いでいる。
結婚式も盛んに行われているザバブルク城
城では結婚式も行われる。城の真下に広がる自然動物公園の中にチャペルがあり、ここで挙式する。そのあと城のレストランで披露宴が始まる。フランクフルトからやって来たというカップルは「こんな美しい自然に囲まれた古城で式を挙げられて夢のよう!」と笑顔で話してくれた。今夜は塔の上のスイートルームに泊るそうで幸せいっぱいの新婚さんだった。塔に上がる階段の脇に糸紡ぎ車が置かれており、演出も万全。中世の城なのでエレベーターなどはない。螺旋状の階段を上って行くのは大変だけれど、塔の部屋に泊るなんて、まるで“いばら姫”になった気分。新婚さんでなくともこの雰囲気、ぜひ味わってみたい。
シュロスホテル・ザバブルク
Schloss Hotel Sababurg
Reinhardswald D-34369 Hofgeismar (Sababurg)
Tel : +49.(0)5671-808-0
Fax : +49.(0)5671-808-200
dornroeschenschloss@sababurg.de
www.Dornroeschenschloss.de
交通:
鉄道でフランクフルトからカッセルまで約3時間
鉄道でカッセルKasselからホーフガイスマールHofgeismarまで約25分
タクシーでホーフガイスマールより20分ほど(料金は約20EUR)
宿泊料金:
ケメナーテ宿泊の場合
一部屋 90~130 EUR
朝食 一人15 EUR
塔宿泊の場合
一部屋 160~230 EUR
朝食 一人 15EUR
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2011/07/02)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
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