- 沖島博美
- 東京在住。 旅行作家。ドイツの民俗、歴史、文化などを取材し、書籍や雑誌で紹介し続けている。主な著書に『グリム童話で旅するドイツ・メルヘン街道』(ダイアモンド社)、『北ドイツ=海の街の物語』(東京書籍)、『ベルリン/ドレスデン』(日経BP),『ドイツ〜チェコ古城街道』(新潮社)、『ドイツ・クリスマスマーケット案内』(河出書房新社)など他多数。日本旅行作家協会会員。
出発エリアをに変更しました。
新たにオープンしたグリム兄弟博物館Grimm Welt
グリム兄弟はフランクフルトに近いハーナウで生まれ、最後はベルリンで亡くなっているが人生で最も多くの年月を過ごしたのはカッセルだった。2人はカッセルで多くの研究を行い、書物を出版し、古い民話を収集して後に有名となるグリム童話を世に送り出した。兄弟に最もゆかりの深いカッセルに1897年、グリム協会が設立された。グリム家から提供された遺愛品や知人と交わした手紙、研究資料などを協会が保管し、その数はなんと10万点近くに及んでいる。その一部を展示するため、カッセル市は兄弟も頻繁に足を運んだことのあるヘッセン方伯の小宮殿パレ・ベルヴューにグリム兄弟博物館を設けた。博物館が開かれると、世界中からグリムファンがここにやってきた。
館内には各国語に翻訳されたグリム童話集が展示されている
パレ・ベルヴューは美しい瀟洒な館だったが、余りにも多くの資料は展示品を時々入れ替えても手狭であるため、市はかなり前から新しい博物館の建設を考えていた。長年の歳月をかけてプランを練り上げ、遂に新しいグリム博物館が2015年に完成。グリム・ヴェルト(グリムの世界)という名称で9月4日にオープンした。場所は市庁舎の近く、カッセル・ヴィルヘルムスヘーエ駅からトラム1本で来ることができる。以前の博物館からも近い緑地帯の中に四角い建物が出現した。3階建ての博物館屋上には外階段でいつでも上がることができ、カッセルの美しい眺望が得られる。緑地帯に現れたモダンな建物は美観を損ねるわけでもなく、むしろ市民の散策に展望台の役割を果たして喜ばれている。
全体に暗めの館内はスポットごとに明るく照らされている
館内の展示方法が変わっている。グリム兄弟に関わる事柄をAからZに分類し、26のコーナーに解説パネルと展示品が置かれている。その中にはグリム童話集の初版本はもちろん、グリム兄弟が取り掛かって後の学者たちが後を引き継ぎ、およそ100年掛って完成したドイツ語辞典も展示されている。全体の雰囲気はメルヒェン的というよりむしろミステリアスで、ここには何があるのだろう、と訪れる者の好奇心を引きつけている。前評判も高かったことから入場者数は1カ月で約3000人に達した。グリムというと子供向けというイメージがあるが、ここでは大人と男性の入場者が目立つ。勿論、子どもが喜ぶ展示も豊富なため家族連れも多い。
Penta Hotel Kassel の玄関脇に設けられた喫煙コーナー
グリム・ヴェルトへはドイツ新幹線ICEの停車駅カッセル・ヴィルヘルムスヘーエからトラムの1,3,4番で10分ほどのラートハウスRathaus(市庁舎)で降りる。カッセルでお薦めしたいのは駅の裏手にあるペンタ・ホテルだ。コンセプトが変わったユニークなホテルで、レセプションはカウンターバーになっており受付が何処なのか戸惑う。今や煙草を吸う人は嫌われ者だが、ここでは玄関脇に高級ムードの喫煙コーナーを設けている。虐げられたイメージを持っている喫煙者には大好評。若者たちに人気のホテルだが、老夫婦や中年ビジネスマンの利用も多い。カッセルの観光名所である240haに及ぶヴィルヘルムスヘーエ丘陵公園にもトラム1本で行くことができる。宿泊するなら市内観光に便利なペンタ・ホテルに泊まってみよう。
客室は広く、インテリアは控えめのデザイン系
グリム・ヴェルト・カッセル Grimm Welt Kassel
住所:Weinbergstrasse 21
電話:+49 561 5986 190
開館:月曜を除く10:00〜18:00(金曜は〜20:00)
入館料:8ユーロ
www.grimmwelt.de
ペンタ・ホテル・カッセル Penta Hotel Kassel
住所:Bertha-von-Suttner Strasse 15
電話:0561 9339 887、 予約は069 256699 300
宿泊料:80ユーロ〜
info.kassel@pentahotels.com
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2015/11/06)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
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