- 元川悦子
- 長野県出身。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。著書に「U−22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)「古沼貞雄 情熱」(学習研究社)ほか。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。W杯は94年大会から4回連続で現地取材した。現在も日本代表ウォッチャーとして世界各国を回っている。
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名門、バイエルン・ミュンヘンの練習場入り口にあるエンブレム。このゲートを通って数々の名選手が育っていった
稲本潤一、高原直泰という2人の日本人選手が参戦していることで注目されるドイツ・ブンデスリーガ。しかし10位前後をウロウロするフランクフルトと違い、着実に首位をキープするのが、バイエルン・ミュンヘンだ。かつてボルシア・ドルトムントを率いてUEFAチャンピオンズリーグを制したヒッツフェルト監督が就任した今季は、2006年ドイツワールドカップ得点王のクローゼや同W杯で活躍したフランス代表のリベリー、イタリア代表のトニらタレントを大量補強。常勝軍団・バイエルンを見事に蘇らせた。
彼らの本拠地「アリアンツ・アレナ」への行き方はすでに紹介した。が、ドイツサッカーを堪能するのは試合だけではない。基本的に練習非公開のイングランドと違い、ドイツではほとんどのクラブが練習場を「ファンの憩いの場」としている。それは強豪・バイエルンとて例外ではないのだ。
練習場内にあるレストランからはトップチームのトレーニングピッチが一望できる。コンサドーレ札幌の宮の沢練習場もここを真似て作られた
バイエルンの練習場へ行くには、ミュンヘン中央駅からUバーン1(南方向に)に乗って「ヴェッターステインプラッツ(Wettersteinplatz)」で下車し、タクシーに乗ればいい。駅からは徒歩でも20〜25分程度の距離だ。まず印象的なのが、クラブハウス全体がチームカラーの赤と白で彩られていること。ピッチは4〜5面あるが、レストランからはトップチームのトレーニング場が見える構造になっている。サポーターはミュンヘンを代表するビールを飲み、食事を取りながら、クローゼやトニらの練習風景を眺めることができるのだ。まさに「ファン第一」というクラブのスタンスがよく分かる。
ミュンヘンといえばバイツェンビア。世界のトップ選手を眺めながらの一杯は極上だ
練習後にはサインをもらったり、写真を撮ってもらったりすることも可能だ。ドイツでプレーする選手はファンサービスに熱心だ。取材対応もしっかりしていて、メディアの質問に答えなかったり、無下にはねつけたりすることはほとんどない。プロサッカークラブがファンとメディアの上に成り立っていることを選手たちもよく理解しているからこそ、紳士的な立ち振る舞いができるのだ。
私も数年前に当地を訪れた際、偶然にも育成部門のコーチをしていたゲルト・ミューラと遭遇した。ゲルト・ミュラーといえば、74年西ドイツワールドカップ得点王で「爆撃機」といわれた世界的FW。彼もまた爽やかな笑顔でカメラに収まってくれた。そういう心優しい対応は本当に気分がいいものだ。
1860ミュンヘンの練習場入り口。バイエルンの練習場から徒歩5分ほどの距離だ
一方、ミュンヘンにはもう1つ地域を代表するサッカークラブがある。それがTSV1860(ゼヒツィッヒ)ミュンヘンだ。03-04シーズンまではブンデスリーガ1部を戦っていたが、そのシーズンに降格を余儀なくされ、今季で2部・3年目を迎える。が、彼らがドイツ最古のプロサッカークラブであることは間違いない事実。その歴史と伝統を今も誇りに感じるファンは多い。
こちらの練習場はバイエルンの練習場から徒歩5分と非常に近い。両クラブを駆け足で回れるのは、ドイツ広しといえどもミュンヘンだけ。ならば、一石二鳥を狙うしかない。バイエルンのショップスタッフや地元の人に聞けば、1860ミュンヘンへの行き方も簡単に分かるはずだ。
練習場のレストランで食べるバイスヴルスト(白ソーセージ)は絶品
チームカラーのブルーで縁取りされた看板をくぐっていくと、チームショップにクラブハウス、レストラン、そして5〜6面のピッチがある。老舗クラブだけあって、朝から地元のサッカーおじさんたちが続々と集まってくる。彼らは年金生活者なのか、のんびりと練習を眺めながらサッカー談義に花を咲かせる。もちろんバイツェンビア(酸味の強い白ビール)を片手に、だ。そして、お昼になると、バイエルン州で最もポピュラーな「バイスヴルスト(Weiswurst=白ソーセージ)」に舌鼓を打つ。バイスヴルストは大きな器で茹でられた状態で出てくるが、これを輪切りにして食べようとするのは間違い。ソーセージをタテに方向に2等分し、皮を取って食べるのが正しい方法という。ここのレストランに行けば、周りの人々が親切に教えてくれるはずだ。実際、私もそうだった。
今季は目下、4位と1部復帰のチャンスもありそうな1860ミュンヘン。バイエルンとは違ったローカルクラブのほのぼのとした雰囲気もまた味わい深いもの。練習場を訪ね歩き、ライバル関係にある両クラブにじっくり触れてみるのも、ドイツサッカーの1つの旅である。
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