ギリシャ神話の中のミノス王とクノッソス

「ヨーロッパ最古の文明? 地中海に栄えたミノア文明とは?」その1からの続きです。まずはよく知られているギリシャ神話の中のクノッソスを紹介しましょう。ギリシャの主神ゼウスはテュロス(地中海東岸の都市・現ティール)の王の娘エウロペ(“ヨーロッパ”の語源)を好きになり、牡牛の姿に化けて彼女をさらいます。二人の間に生まれたミノスは、成長するとクレタ島の王になりました。王の証として生贄の牡牛が必要になったミノスは、それを海神ポセイドンに頼みます。ポセイドンはそれに応えて牡牛を海から送りますが、その牡牛があまりにも美しかったため、ミノスは代わりの牡牛を生贄にしてしまいます。怒ったのはポセイドンです。罰として、ミノス王の妻のパシパエがこの牡牛に惚れるようにしてしまいます。そこで生まれたのが、牛頭人身の怪物ミノタウロスでした。処置に困ったミノスは、名工と言われたダイダロスに命じて迷宮であるラビリンスを造らせ、そこにミノタウロスを閉じ込めてしまいます。

ギリシャ神話の中にも登場するクノッソス宮殿の跡 ギリシャ神話の中にも登場するクノッソス宮殿の跡

ミノタウロス退治とラビリンス(迷宮)からの脱出

時は流れ、クレタとアテネの間に諍いがあり、負けたアテネは数年ごとに少年少女を7人ずつクレタ島に貢ぐことになりました。彼らはみな怪物ミノタウロスの餌食になる定めでした。何回目かに送られた一団の中に、英雄のテセウスがもぐりこみます。テセウスはイケメンだったのか、たちまちミノス王の娘アリアドネに惚れられてしまいます。アリアドネは彼を救おうと短剣と魔法の糸を渡し、その一方の端を持ちました。迷宮に入ったテセウスは短剣でミノタウロスを倒し、アリアドネが持つ糸を手繰り寄せて脱出に成功。彼女を連れてクレタ島から故郷に出発します。英語で「迷宮」を「ラビリンス」と言うのは、この神話が語源になっているからです。

生贄の「牛」のイメージが、いつしかミノタウロスに?

この話にはまだまだ続きがあるのですが、クノッソスに関係あるのはここまで。古代ギリシャの中心都市アテネが栄えたのはミノア文明のクノッソスより1000年ぐらい後のことですが、まだ人々の中にクレタ島の繁栄の記憶が残っていたのでしょう。ミノア文明に限らないのですが、古代では牡牛を神聖視する国や地域はかなりありました。生贄の動物の中でも格が高いのが貴重な牡牛だったからです。たぶんこの神話が生まれたころのアテネでは、すでに神々の像を作っていましたから、それより1000年も前に牡牛を神格化していたミノア文明が少し異様に見え、こんな話を作り出したのかもしれません。またミノア文明では、実際に呪術師が牛頭の被り物をして儀式をしていたのかもしれません。(その3に続く)