- Hiromi
- 東京在住。トラベルジャーナリスト。1995年に初めてハンガリーを旅して以来、この国の魅力に取りつかれる。ハンガリー友好協会にて岩崎悦子氏にハンガリー語を学ぶ。1999年よりほぼ毎年ハンガリーを訪れて取材を続け、雑誌やガイドブックなどに紹介している。著書に『ハンガリー』(日経BP)がある。ハンガリー友好協会会員。
出発エリアをに変更しました。
キレンツリュク・ヒード(9のアーチ橋)と呼ばれる古い石橋
ハンガリー大平原とは、地理的にはハンガリーの北東から流れてドナウに流れ入るティサ川と、ブダペストを通過してハンガリーを2分するように南へ流れていくドナウ川に挟まれたハンガリー東部全体のことを示している。しかし観光的には国立公園となっているホルトバージが最も有名で、ハンガリー大平原を見たいならホルトバージへ行くのが一般的だ。ホルトバージ国立公園を訪れた際には是非、入り口からほんの少し北へ歩いた所にある橋まで行ってみよう。ホvルトバージ川が流れており、そこに架かる全長およそ170メートルの長い橋は「9つのアーチがある橋Kilenclyuku hid」と呼ばれ、ハンガリーで最も古い石橋であるとのこと。その名の通り、アーチが9つある。橋の手前にホルトバージ・チャールダという美味しいレストランがあるので、このレストランのこともお忘れなく。
カルヴァン広場に立つコシュート・ラヨシュの群像
ホルトバージ国立公園はハンガリー東部の都市デブレツェンの近くにある。ブダペストから電車を乗り継いで来られるがホルトバージ駅からの道が判り難く徒歩30〜40分かかる。そこでブダペストに次ぐハンガリー第2の都市デブレツェンの観光も兼ね、ここを拠点にするのが良いのでは。デブレツェンからは国立公園入口までバスで行くことができる。デブレツェンは宗教改革運動の過程でカルヴァン派の拠点となった進歩的な町だ。1848年のハンガリー革命ではコシュート・ラヨシュが率いる独立運動の中心地となる。由緒ある大学もあり、アカデミックで進歩的な町として知られている。中心のカルヴァン広場には改革派教会が聳え、その前にコシュート・ラヨシュの群像がある。中央にコシュートが立ち、左側には3人の側近が、右側には戦地へ赴く若い志願兵と彼を送り出す母親の姿がある。町の人は言う。母親は息子を激励しているのだ、と。そうなのだろうか。息子をじっと見つめ、腕に手をかける母親はむしろ息子を引き留めているように見える。
立派な角をはやした灰色の牛の群れ
ホルトバージ国立公園はハンガリー大平原(ナジ・アルフェルトNagy Alfold)の一部で、1973年にハンガリーで最初の国立公園となり、1999年には世界遺産に登録された。見渡す限り平らな草原が貴重というよりも、ここで育つ珍しい牛や羊などの文化的景観が世界遺産の対象となった。公園の中へ個人で入ることはできず、ツアーチケットを買ってグループで馬車に乗って回ることになる。丈の低い草しか生えていない公園内を馬車に揺られて行くと、本当に地平線が見えてくる。時おり目の前を羊の群れや牛の群れがゆっくり移動していく。羊はラツカという珍しい種類で、角が紙縒り(こより)の様に捻じれている。牛はホルシュタインのような見慣れた牛ではなく、長い角をはやした灰色がかった大きな牛。かつては、この牛をグヤーシュ(ハンガリー名物の牛肉スープ)に使っていた。ハンガリーの国宝に指定されているマンガリッツァという豚もここで飼育されている。
立ち乗り芸は1頭から始まり、3頭の馬に引かれて2頭の馬に跨るという合計5頭の馬を操る技へと発展する
馬車ツアーでは途中で興味深い馬のショーがあり、牧童たちが教えた色々な芸が披露される。馬は本来犬のような「お座り」はできないが、大平原では少しでも背丈を低くして身を守るよう躾られた。馬たちが並んでお座りする姿は可愛い。疾走する馬に立ち乗りするのは牧童にとって当たり前のこと。しかし2頭の馬に片足ずつ乗せて円を描くのは相当な技術が要る。内側と外側の馬の歩調を合わせねばならぬからだ。この乗り方はオーストリアの画家が、夢で見た2頭の馬に立ち乗りする牧童を描いたのが始まりだった。その絵を見たハンガリーの牧童が長い間練習して乗りこなせるようになった。それ以来牧童たちの憧れとなり、今でもショーのハイライトになっている。高度な芸を披露してくれるベテランの牧童たち。その脇に若い牧童たちがたくさんいる。あどけない顔をした彼らもやがて2頭の馬に立ち乗りできるようになるのだろう。
幼さの残る若い牧童が微笑む
ホルトバージ国立公園
Hortobagy Nemzeti park-Puszta
住所:Hortobagy, Petofi ter 9, 4071 ハンガリー
9つのアーチの橋
Kilenclyuku hid
住所:Hortobagy, Petofi ter, 4071 ハンガリー
ホルトバージ・チャールダ
Hortobagyi Csard
住所:Hortobagy, Petofi ter 1, 4071 ハンガリー
電話:+36 5258 9010
営業時間:月曜から日曜の11:00〜18:00
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2021/01/13)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
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