33歳にして美術館を作ったヒュー・レイン卿

この美術館に名前が冠されているヒュー・レインは、モダンアートのための美術館を最初期に設立したことで知られるアイルランドきっての美術コレクターです。1875年生まれ、1915年没という40年ほどの短い人生にも関わらず、主に印象派を扱うディーラーとして精力的に活動し、1908年に33歳でダブリン市モダンアート美術館を設立するという偉業を成し遂げました。翌年にはその功績を称えてナイトの爵位を授与されます。彼の死後、この美術館はイギリスとの政治的関係からコレクションの所有にいさかいが起きますが、今では解決し、作品がこちらに戻っています。現在ではダブリン市が運営する、入場無料の美術館となっています。

通り沿いにひっそりたたずむヒュー・レイン市立美術館 通り沿いにひっそりたたずむヒュー・レイン市立美術館

最大の見どころはフランシス・ベーコンの常設展

とはいうものの、実は現在この美術館で注目されているのはヒュー・レイン自身のコレクションよりも、20世紀を代表するダブリン出身の現代画家フランシス・ベーコンの常設展といえます。その作品はもちろん、乱雑なままに保存された彼のスタジオや、大画面スクリーンで見るインタビュー映像、壁に大きく書かれたベーコンの言葉の数々など、ベーコン・ファンでなくともその世界に引き込まれてしまうような力の入った展示は見ごたえ抜群です。

日本でも人気の19、20世紀フランス画家の作品

もちろんヒュー・レインの蒐集した印象派作品も充実しており、モネ、マネ、ルノワール、ドガ、ピサロなどの作品のコレクションがあります。印象派と関係が深いバルビゾン派のコローやルソー、写実主義のクールベ、モネの肖像画で有名な女性画家モリゾなど、19、20世紀フランス画家の作品が幅広く揃っており、バラエティに富んでいます。これらはイギリスのナショナル・ライブラリーとの共同所有となっているものもあり、場合によっては展示されていないタイミングもありますが、私が訪れたときには、ルノアールの「雨傘」、マネの「エヴァ・ゴンザレス」、クールベの「蛍雪」、モリゾの「夏の日」などの素晴らしい作品を間近でじっくり眺められて感激でした。

もちろんアイルランドの絵画も充実

フランス以外でも、イギリスのバーン=ジョーンズの「眠り姫」が圧巻だったほか、ジョン・バトラー・イエーツ(アイルランド随一の詩人ウィリアム・バトラー・イエーツの父)を中心としたアイルランド画家の作品なども充実しています。そしていずれも、「印象派が好きならこういう絵も好きだろうな」と思わせる作品ばかりで、私としてはうれしい限りでした。美術館はあまり目立たずひっそりと建っていますが、ご紹介したもの以外にも素敵な作品が多数展示されています。入場無料(寄付は歓迎)なので、気軽に立ち寄れば、きっと有意義な時間を過ごせますよ。