旧約聖書の世界へ、いざ

“伝説の地”というと、なんとも旅心がうずくものですよね。聖書に詳しくない人でも、「ソドムとゴモラ」という言葉は聞いたことがあるでしょう。ともに旧約聖書に出てくる伝説の町の名前です。堕落した二つの町が神の怒りに触れて滅亡したと書かれていますが、「死海に沈んだ」とされるゴモラに対し、ソドムのほうは「死海の南西岸にあるソドム山がその地である」と今も伝えられているのです。その根拠となるのが、今回ご紹介する「ロトの妻の塩柱」です。

旧約聖書に登場する、伝説の塩柱「ロトの妻」を見に 旧約聖書に登場する、伝説の塩柱「ロトの妻」を見に

死海に沿った道をドライブしていくと……

私が行ったのは真夏でした。レンタカーで死海沿いの道をひたすら南下。はじめは満々と水をたたえていた死海は、南下するにつれだんだん水が干上がってきて、ただ塩が白く固まっているだけの大地へ変わっていきます。その塩の上に薄く土が積もっていて、ちょっと汚く見えます。塩の精製工場の前を通ると、真っ白な塩が山となっていて目にまぶしく映ります。この塩はミネラル分を豊富に含んでいるため、化粧品や入浴剤に使われるのです。そんな景色の移り変わりを楽しみながら死海の南端まで来ると、やがて岩塩が固まってできたソドム山(死海からの標高は230m)が見えてきます。ここに、ひときわ目立つ塩の柱がそびえています。とくに案内板などはありませんが、一目で「これがあの『ロトの妻の塩柱』だ」とわかります。たしかに、裾の長い民族服をまとった女性が、死海の方を眺めている姿に見えるからです。

「ロトの妻」とはどんな伝説か

旧約聖書には次のような伝説が記されています。「堕落した町ソドムを滅ぼすために二人の神の使いがやってきたが、アブラハムの甥のロトとその家族だけは滅亡を免れることとなった。ロトの家族が隣の町まで逃げるまでの間、硫黄の炎でソドムを焼き尽くすのを神は待ってくれるが、約束として『決して後ろを振り返ってはならない』と言われる。しかしロトの妻だけは神との約束を破り、自分の町を思わず振り返ってしまう。その瞬間、妻の姿は塩の柱に変えられてしまった。」

“伝説”が惹き付ける、場所の力

ようするに、海岸線の観光などでよくあるような(「夫婦岩」のように)、岩を何かに見立てるのと同じことなのですが、なんといってもここは、旧約聖書の伝説の地ソドム。とてつもないところに来たという感慨が、否応なく高まるのを抑えられません。予想外に「ロトの妻」が大きかったことや、身の危険を感じるほどの暑さ、辺りの地面の踏み心地が、さくさくと一歩ごとに崩れゆくようで、「この地面は土ではなく塩なんだ」と実感したこと……それらがさらに感慨を深める手助けをしています。信仰心のあるなしに関わらず、胸に迫る場所でした。やはり、“伝説”の伝わる場所には人を惹き付ける力が宿っているものです。あなたを惹き付けてやまない“伝説の地”へ、旅立ってみませんか!