要塞の頂上へはロープウェイが便利

要塞の頂上までは、ロープウェイで行かれます。順番を待つ長蛇の列をあらためて見てみると、ユダヤ人ばかりでなく世界各国からの外国人観光客が並んでいます。ここはイスラエル国内で首都エルサレムに次ぐ国内第二位の観光地といわれますが、遺跡好き・歴史好きな外国人にも人気の高い場所なのですね。彼らとともに、かなりぎゅうぎゅう詰めにされて頂上駅へ。徒歩でも登れる道がありますが、暑さの中を1時間は登ることになります。ロープウェイならわずか3分ほどで到着します。

イスラエルで初めて世界遺産に登録されたマサダ要塞(後編) イスラエルで初めて世界遺産に登録されたマサダ要塞(後編)

真夏の遺跡見学は暑さとの戦い!

頂上に着いていよいよ遺跡をじっくり見学……と思っていましたが、見学はひたすら暑熱との戦いとなってしまいました。帽子やサングラスだけでは足りず、私は日傘も差していましたが、白人のツーリストから「いいねえ日傘は。東洋人はよく日傘を持っているね、西洋人はつい日傘を忘れてしまう。こう暑いと羨ましいよ!」と褒められました。それくらい、夏の真っ昼間は暑いので、十分な対策が必要です。真面目に遺跡見学をしたくても、熱い土くれの上を歩いているうちに、思考力も体力も水分もどんどん奪われていくのです。しかし、この地獄のような暑さは、結果的には功を奏していたのかもしれない、と思い始めました。

苦しさを体験して見えた、古代人の決意

なぜなら、この気候の厳しさをわずかでも実感できたことで、古代のユダヤ人たちの決意の固さやローマ人たちの執念の程を窺い知ることができたからです。住居跡や倉庫跡、そしてシナゴーグの跡などの要塞の遺跡は、たしかに凄みのあるものでしたが、見た目をよくするための修復をしすぎという印象を持ちました。むしろ灼熱の暑さと頂上からの眺めに、強い感銘を受けました。果てしない荒野と、死海。ただそれだけです。青のような緑のような死海の水の色は、「神秘的で美しい」と言えば言えますが、見ようによっては絶望の色とも言えます。生命が生まれることのない水だからです。海抜-400mの死海の上には、異様に濃い霧がかかっています。それが標高400mの砦の高さにまで達しています。強い日光により、水が常に大量に蒸発し続けているためだそうです。

これぞ「世界遺産」という手応えを得られます

“建築王”ヘロデ王の時代の遺跡も状態よく残っているし、陥落直前の篭城時代の遺跡も、ローマ軍が攻め上ってきた道もしっかり保存されています。私は、このせまい山の頂上で、今の自分と同じように、死の色の湖と荒野を眺めて数年間を生き延びていたユダヤ人の心持ちはいかばかりだったかという想像を巡らせていました。歴史の重さと気候の激しさがずっしりと迫ってくる、ここはまさしく「世界遺産」の名にふさわしい遺跡でした。