60年代に作られた、イエスの生涯を描く2本の伝記映画

「イエス・キリストの生涯を映画で知る」その2です。60年代にはアメリカで2本の正統派イエス伝記映画が作られます。1961年の『キング・オブ・キングス』(ニコラス・レイ監督)は、戦前の同名映画とはあまり関係なく、タイトルだけ拝借した模様です。この映画の特徴は、ローマに武力で反抗した男・バラバを副主人公にしていることです。平和を説くイエスを引き立たせるために、武力による勝利を信じる男を配置したのでしょう。撮影はスペインのマドリッド周辺で行われました。

ヨーロッパに行く前に観たい! イエス・キリストの生涯を映画で知る その2 ヨーロッパに行く前に観たい! イエス・キリストの生涯を映画で知る その2

正統派伝記映画はやっぱり長い?

もう1本は1965年の『偉大な生涯の物語』(ジョージ・スティーブンス監督)。これは聖書にあるイエスの逸話をできるだけ忠実に網羅しようとした、“みんなが知っている”3時間超の正統派イエス映画です。知識を得るには一番いいでしょうが、いかんせん映画として単調という欠点が…。ユタ州やネバダ州をイスラエルの地に見立てて撮影が行われました。共にDVDで簡単に観ることができます。

私のおすすめは、イタリアのイエス映画

しかし私のおすすめのイエス伝記映画はハリウッド作品ではなく、1964年にイタリアで作られた『奇跡の丘』(ピエル・パオロ・パゾリーニ監督)です。これは4つの福音書のうち、「マタイの福音書」のみを映画化したものですが、主要なエピソードは入っているので、聖書を知るにも悪くありません。好きなポイントはハリウッド映画にない素朴さで、「きっと当時はこんな感じだったんだなあ」というリアルさを感じさせてくれるのです。また、俳優でなく素人を起用した所も、作りものさが希薄な所でしょう。見ていると舞台となる南イタリアの岩窟住居の風景が、1世紀のイスラエルのように思えてきます。撮影は南イタリアのカラブリアとプーリア周辺で行われました。バチカンのおすみつきもあるようですよ。

人間としてのイエスの苦悩を描く、異色ミュージカル

1970年代になると、時代も大きく変わり、聖人イエスより“人間イエス”を描いた映画が作られるようになってきます。舞台でヒットしたミュージカルの映画化が、1973年の『ジーザス・クライスト・スーパースター』(ノーマン・ジュイソン監督)。日本では劇団四季のものが有名ですね。これはイエスの最後の7日間を描いているのですが、話の主軸はイエスを裏切るユダの葛藤です。宗教絵画では単に醜く描かれるユダですが、ここではイエスを愛しながら、煮え切らないイエスに憎しみも抱くという、人間味のあるユダが登場します。ミュージカルですが、映画は全編イスラエル・ロケ。登場人物は当時のヒッピー風と、そのギャップも面白い作品です。(その3につづく)