- 木場しのぶ
- ライター、コーディネーター、フォトグラファー。専ら端午の節句生まれを誉れとし、鯉幟を吊るす竹のように生きることを目指す。趣味・興味は多方面に渡るが、特に“食べて飲んで湯に浸かる”の3拍子をこよなく愛する。イタリア語通訳案内士資格を所持し、通訳としても活動。著書『蝦(エビ)で釣られたイタリア』は涙と笑いのイタリア滞在記。
出発エリアをに変更しました。
博物館正面玄関。ウフィッツィ美術館のすぐ裏、アルノ川沿いです
「レオナルドの他に天才がいた!」
興奮した私が友人に送ったメール。私の中で天才といえばレオナルド・ダ・ヴィンチだったわけですが、その日から、もう一人の天才イタリア人にも魅了されることになりました。
出会ったのは、フィレンツェの「Istituto e Museo di Storia della Scienza(科学史研究所兼博物館)」。ここは物理学・化学・生物学・天文学・地学など自然科学全般の博物館です。現代科学の基礎を築いた機械や装置、また資料を基に新しく作られたものなどを展示しています。
「アーミラリー天球」。メディチ家のフェルディナンド一世(1549-1609)の命で、アントニオ・サントゥッチが製作したもの
中でも私が最もショックを受けたのは天体分野。真っ先に驚かされたものが、1588〜1593に作られた「アーミラリー天球」です。中心に地球が据わり、その外側に7つの惑星(月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星)が並びます。そして天空の天辺に「神」。この時代はまだ、紀元前のアリストテレスに始まった地球中心説(天動説)が信奉されていたんですよね。3m以上もの高さの精巧に作られたこの天球は全体が木製ですが、枠と土台に贅沢に純金箔が施されて威厳を醸し、事実とは異なることを知りながらも洗脳されてしまいそうな迫力があります。
天動説から1800年以上もの気が遠くなるような長き年月を経て、コペルニクスの太陽中心説(地動説)に至るわけですが、この説を受け継いだのが、私を魅了した天才。ガリレオ・ガリレイです。
ガリレオは、物理学者、天文学者、かつ哲学者。大学入学当初は医学を専攻していたという超人です。
天文学者として、オランダで発明された望遠鏡を数十倍の性能のものに作り変え、1610年に初めて木星の衛星を発見。その発見に使用した望遠鏡のレンズが博物館に残っています。
その他にも大小幾つもの望遠鏡がありますが、晩年両目共に失明してしまったのは、太陽黒点の観測に於いてもヨーロッパ第一人者の彼が、太陽を見すぎたせいだとも言われるそうです。さらに測温器やコンパスなども含め、使用する機具を自らで考案・製作したガリレオは、研究者であるとともに卓越した技術をもつ職人でもありました。そしてこれらの天体研究すべてが、地動説の根拠ともなるのです。
カトリック教の異端者とされたまま永眠してから、正式にローマ教皇からの埋葬許可が下りるまで約100年。1992年に教皇ヨハネパウロ二世による謝罪まで3世紀半です。
「それでも地球は動く」という言葉は、後の創作とも言われています。でも、この博物館でガリレオの偉大な足跡を辿り、改めてその言葉の重みを感じました。
天才科学者の業績と、皮肉な運命――。ぜひ皆さんにもフィレンツェ「科学史研究所兼博物館」で、感じていただければと思います。
■ Istituto e Museo di Storia della Scienza(科学史研究所兼博物館)
住所:Piazza dei Giudici, 1 - 50122 Firenze
アクセス:ウフィッィ美術館裏
電話番号:(+39)055-265311
URL:www.imss.fi.it
開館時間:(月・水・木・金)9:30〜17:00、(火・土)9:30〜13:00
休館日:日曜、8/15
入館料:(一般)7,5ユーロ、(7〜18、65才以上)4ユーロ、(6才以下)無料
その他:8/30、9/6は21:00〜23:30もオープン
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2007/08/08)
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