- 堂剛
- イタリア・フィレンツェ在住。2003年単独イタリア在住を決意し、中世の街オルビエートに移住。現在はフィレンツェを中心に幅広く日本とイタリアの架け橋を構築。日本人向けサイト「アーモイタリア」やイタリア人向け「ベルジャッポーネ」もその一つ。ワインと料理を愛し、イタリア全土の美味しいもの発掘がライフワーク
出発エリアをに変更しました。
迷路の植え込みの中にたたずむのは「ムーア人の噴水」。幾何学的な造形と、美しい彫刻がこの庭園美のベースとなります
ローマとオルヴィエートの中間に位置するヴィテルボの近くに、イタリアでも有数の庭園があります。それが「ヴィラ・ランテ(Villa lante)」です。16世紀にヴィテルボの司教の別荘として建設され、枢機卿から枢機卿へと所有者を変えながら完成に至りました。
イタリアでは昔からゆったりと余暇を過ごすために、町から少し離れた自然のなかに別荘を構えるのがステータスとされてきました。山の傾斜を利用し、噴水やテラスを上手に配置し、自然の景観を損なうことなく芸術家たちは腕を振るったのです。この「ヴィラ・ランテ」はイタリア式庭園が最高の保存状態残っている別荘の一つとされています。
半楕円形の美しい噴水「ペガサスの泉」。背後には奥深い森が見え、心が洗われる気分です
ヴィッラに入るとまず目にするのは、冠状の欄干が美しい「ペガサスの泉(Fontana del Pegaso)」。欄干の下には女性の胸像が並び、唇から弧を描いて水が流れ落ちています。蝶の羽をもった海の精「ネレイス」が高く水を吹き上げ、中央にペガサスがたたずむ美しい池です。
この池を挟んで左を登って行くと「イタリア式庭園」、右に進むと樫の木が茂る大きな公園にたどり着きます。庭園内には他にも様々な泉・噴水があります。順に見て行きましょう。
「巨人の泉」の迫力は圧倒的です。長い年月をかけてできた苔が覆う巨人は寝そべり、たださわやかな水のせせらぎだけが、庭園にこだまします
庭園の一番奥の高台には、シダがうっそうと茂った洞窟のような「大雨の山(Monte della Pioggia)」があり、そこから溢れ出るのは「大洪水の泉(Fontana del Diluvio)」です。池は一年中色鮮やかな緑の藻で覆われていて、二匹のイルカが可愛い顔を出しています。
その下のテラスに鎮座するのは八角形の「イルカの泉(Fontana dei Delfini」です。八つの角には2つずつ、計16のイルカの彫刻が施されています。イルカの噴水から流れた水は、長い樋状の「鎖の泉(Fontana della Catena)」を伝い、巨大海老の形をした口に出ます。上から3段目にあたるテラスに広がる「巨人の泉(Fontana dei Giganti)」にたどり着くのです。この二人の巨人はローマのテヴェレ川とフィレンツェのアルノ川を表していて、当時のローマ教皇とメディチ家の友好関係を表現したと言われています。
「枢機卿のテーブル」はかつての冷蔵庫。奥に見えるのが「巨人の泉」。シンメトリーはイタリア式庭園の特徴です
その後、中段テラスにある「枢機卿のテーブル(Tavola del Cardinale)」と呼ばれる、これもペペリーノ(火山砕屑岩)をくりぬいて作られた泉にたどり着きます。一見テーブルのように見える石盤の中央には細長い溝が掘られていて、そこを流れる水を、当時は飲み物や果物を冷やすのに利用したと言われています。
そして水は迷路状の生け垣が取り囲む「ムーア人の噴水(Fontana dei Quattro Mori)」に到着します。四等分された水盤の中には、戦士を乗せた小舟が浮かぶ個性的な噴水です。ここから最初に紹介した「ペガサスの泉」にたどり着くのです。
実はこのヴィラ内にはたくさんの「海老」のマークが彫刻や絵画となって隠されています。このヴィラの所有者であった「ガンバーラ枢機卿」の家紋のデザインがエビで、イタリア語でガンバーラは海老を意味します。ようするに「海老さん」の家紋が「エビ」というわけです。ヴィラ・ランテに訪れた際は「エビ探し」をしてみるのも楽しいでしょう。
■ヴィラ・ランテ(Villa lante)
住所:Via Jacopo Barozzi, 71 Bagnaia (VT)
電話:0761.288008/チケット売り場:0761.288008
開園時間:火曜-日曜、8:30-18:30
休館日:月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
入園料:大人2ユーロ、子どもおよび学生1ユーロ
※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2007/12/21)
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