“不信心”とされて、タイトルを変えた大作絵画

ベネチアのアカデミア美術館の続きです。2階の第2室からは閉鎖中の部屋もあるので、ここでは少し飛ばして第10室に行きましょう。この広い部屋には、ベネチア派を代表する巨匠、ティントレットとヴェロネーゼの大作があります。縦5メートル横13メートルという大きなキャンバスに描かれた『レヴィ家の響宴』(1478年)は、パリのルーブルにある大作『カナの婚礼』と共にヴェロネーゼの代表作です。この作品にはいわくがあります。もともとヴェロネーゼが依頼を受けていたのは「最後の晩餐」でした。つまりイエスと十二弟子だけ描けばいいのですが、ヴェロネーゼは小人や酔っぱらいなど多くの人物を描いてしまいます。しかしそれが“不信心”と見なされて教会に問題視され、異端審問にかけられたのです。要は「描き直しをしろ」という勧告だったのですが、ヴェロネーゼはそれを不服として絵の題名だけ変えて切り抜けました。

内容が物議をかもし、タイトルが変更されたヴェロネーゼの代表作「レヴィ家の響宴」 内容が物議をかもし、タイトルが変更されたヴェロネーゼの代表作「レヴィ家の響宴」

ティントレット、ヴェロネーゼの大作が続く10室と11室

第10室には他にも『聖カテリーナの結婚』など、ヴェロネーゼ作品があります。ティントレット作品では『聖マルコ奇跡の4連作』(1547年頃)が必見です。これはサン・マルコ同信組合の壁を飾っていたものです。ヴェロネーゼ作品に比べると、コントラストの強い画風ですね。隣の11室も大きな部屋が続きます。ここも美術館のハイライトとなる部屋で、ティントレット、ヴェロネーゼ作品が展示されています。ここを過ぎるとしばらく小さな部屋が続き、展示している絵画も時代が下って行きます。16〜18世紀の作品が中心ですね。

絵画の師弟の代表作が並ぶ第20室

では次のハイライトの第20室へ行ってみましょう。ここでの見ものは2点。まずは時代がさかのぼって、ジェンティーレ・ベッリーニの代表作『サン・マルコ広場の祝祭行列』(1496年)。横の長さは7.5メートルある大作です。現在とは少し違う、当時のサン・マルコ広場やサン・マルコ寺院の姿がよくわかりますね。ジェンティーレは第2室に出てきたジョヴァンニの兄です。もう1点は、カルパッチョ作の『リアルト橋から落ちた聖遺物の奇跡』(1494年)。カルパッチョはジェンティーレの弟子でした。料理の「カルパッチョ」は、彼が好んだ料理で、そこからその名がついたという説があります。第21室はカルパッチョの作品のみが展示されています。

謎が多いとされるジョルジョーネの『テンペスタ(嵐)』

最後の第23室には、ジョルジョーネ作の『テンペスタ(嵐)』(1506年頃)があります。これは彼の代表作であり、この美術館の中でもとくに知られているものです。「西洋美術史上最初の風景画」と言われるこの神秘的な絵の解釈については、いろんな説があるので、観る前にいくつか目を通してみるといいでしょう。絵自体はそんなに大きなものではないので、見落とさないようにしてください。それでは、この美術館を楽しんで来てください!