ベネチアからウーディネ経由でチヴィダーレへ

ベネチアの北東約100kmに位置するウーディネは、400年近くベネチア共和国の統治下にあった街で、旧市街には中世にタイムスリップしたかのような雰囲気が漂っています。私がこの街を訪れたのは、郊外にある小さな町チヴィダーレ・デル・フリウリに行くためでした。チヴィダーレ・デル・フリウリは、6世紀に北から侵攻してきたゲルマン系の民族ランゴバルド人によって占領されたのち、ランゴバルド王国の建国時に最初の首都となった町です。今も残るその当時の建築物は、「イタリアのランゴバルド族:権勢の足跡 (568-774年)」の一部として世界遺産に登録されています。

美しい祈祷堂の漆喰彫刻はランゴバルド美術の最高峰といえよう 美しい祈祷堂の漆喰彫刻はランゴバルド美術の最高峰といえよう

かわいいローカル線に揺られて

ウーディネからチヴィダーレまでは、ローカル線「ウーディネ=チヴィダーレ・デル・フリウリ線」で向かいます。私鉄ですが、ウーディネの国鉄駅の構内から発着します。駅の窓口で切符が買えず、窓口の駅員のイタリア語もわからず途方に暮れましたが、もしやと思って駅の構内のキオスクに聞いてみたら大当たり、そのキオスクで切符を売っていました。私が乗った列車は2両編成の古いディーゼル車で、単線をゴトゴトと25分ほど揺られてチヴィダーレに到着しました。チヴィダーレの駅舎は新しく、町の外れにありました。

2011年に世界遺産に登録されたばかり

地図もガイドブックもなかったので、道行く人に尋ねながら、まずは旧市街の中心にある観光案内所に行きました。実は私はチヴィダーレが世界遺産だとは知らずに行ったのですが、2011年に文化遺産に登録されて観光に力を入れ出したのか、案内所の地図や資料はかなり充実しています。見どころや歩く道順、おすすめのレストランや名物などを詳しく説明してもらいました。私がこの町を訪れたのは、ランゴバルド芸術の白眉、「サンタ・マリア・イン・ヴァッレ修道院祈祷堂」を見たかったからです。お昼休みで閉まってしまう前にと、急ぎ足で修道院を目指しました。

ランゴバルド美術の最高峰、祈祷堂の漆喰彫刻

7世紀半ばに建てられた修道院の祈祷堂は、漆喰彫刻やビザンチン風のフレスコ画、モザイク画や円柱など、当時の芸術が詰まった宝物のような空間でした。特に目を引くのは、漆喰彫刻に見られるランゴバルド美術のすばらしさです。正面奥にある扉を飾るブドウの模様のアーチ、その上に並ぶ6人の女性像。中世のキリスト教美術の特徴は平面的であることですが、この女性たちは中世では珍しく、写実的立体的に表現されています。大理石の彫刻とも異なる漆喰の柔らかい質感もとても印象的でした。狭い祈祷所の中でずいぶんと時間を費やしてしまいましたが、お腹もすいてきたのでそろそろお昼ご飯を食べることにしましょう。(後編に続く)