ロミオとジュリエットの町は美しい

イタリア北部、ミラノとヴェネツィアのちょうど真ん中あたりに位置するのがベローナです。アディジェ河畔に位置し、オレンジ色の屋根、石畳の道は、中世の町がそっくり残されたようです。ダンテ、ゲーテ、モーツァルト、そしてシェイクスピアなどの芸術家たちがこぞって訪れた町。きっとその美しさは、昔ながらのものでしょう。シェークスピアが「ロミオとジュリエット」を書いたおかげで、町の色彩には、新たな価値が付け加えられたに違いありません。何度行ってもこの町ほどに、観光客が幸せそうに歩いているところはないと思えるのです。それもきっと、ジュリエットの家が放つ「愛」に彩られるからではないでしょうか。多くの人がジュリエットの家の前で、愛を誓い、確かめ合い、まだ見ぬ愛に心ときめかせているのです。小説の力は、いえシェイクスピアはすごいなあと、この町に来るたびに思うのでした。

海外の歴史的建造物でオペラを愉しむ〜古代の人の心に近づくべローナ音楽祭 海外の歴史的建造物でオペラを愉しむ〜古代の人の心に近づくべローナ音楽祭

ベローナ音楽祭は、現代と古代の出会いの場

そんなベローナでは、1913年から100年以上にもわたって、音楽祭が開催されています。6月の最終盤から7、8月の終盤まで、月曜日を除いてほぼ連日オペラを上演しているのです。しかもその場所がアレーナ(ローマ闘技場)なのです。長径139メートル、短径110メートルのこのアレーナが建造されたのは紀元前後のローマ時代です。2000年も前の建造物で、オペラを上演するなんて、考えただけで胸が高まりませんか? なぜなら、かつて音楽も舞踊も神に捧げるものだったからです。芸術の多くは、宗教とともに歩んで庇護を受け、大衆化し独立してから、まだそう長くは経っていません。すなわちベローナ音楽祭は、古代の精神で築かれたこのアレーナを使って、古代の人々のこころのありように、近づこうとするもの……そう考えることもできるのではないのでしょうか。

ベローナ音楽祭は、真夏の祝祭

開演は夜の21:00。明るく照らされた舞台から、オペラ歌手の歌声が、アレーナ全体に響き渡ります。歌は耳だけで聞くものではない、体に響いてこその歌なのだと、一流の歌声に酔いしれます。オーケストラも負けてはいません。まるで楽音が天に召されるようです。屋外の持つ空間性は、夜ならことのほか、神との一体感が得られやすいのかもしれません。漆黒の闇の中、舞台だけはこうこうと映し出されます。屋根がないために、舞台装置も壮大です。エジプトを題材にした「アイーダ」など、このアレーナだからこそ、雰囲気がそのままに楽しめます。そしてフィナーレ、アンコール! 最後の1曲が体を震わせます。終了すると、午前1時です。放心しつつも、かすかに残った埋もれ火を冷ますべくバーへ。極上の一杯が待っています。毎年人気ですので、予約をお勧めします。素晴らしい音楽祭です。