page top

出発エリアをに変更しました。

海外旅行の検索・比較サイト|エイビーロード
AB-ROAD
オランダ・アムステルダム・美術館・博物館の現地ガイド記事
RSS

海外現地発ガイド通信

「みんなに愛される美術館」ができるまで〜アムステルダム国立美術館の舞台裏


2013年4月に待望の再オープン

Photo: Iwan Baan, Rijksmuseum Amsterdam Photo: Iwan Baan, Rijksmuseum Amsterdam

アムステルダム国立美術館は、中世から現代にわたる8000点の芸術品を収蔵するオランダ最大の美術館です。レンブラントの『夜警』やフェルメールの『牛乳を注ぐ女』など黄金時代の絵画が充実しています。赤レンガの美しいネオルネサンス様式の建物は、オランダを代表する建築家ピエール・コイペルス(1827-1921)によって1876年に設計されました。2004年から行われた大規模な改修工事では、コイペルス建築が創建当時の姿に蘇ったほか、インテリアの壁や床、天井の装飾も見事に復元されています。かつて迷路のように入り組んでいた展示室もシンプルになり、歴史の流れに沿って鑑賞ができるようになりました。

10年もかかった改修工事

17世紀オランダ絵画が圧巻の「栄誉の間」 Photo: Iwan Baan, Rijksmuseum Amsterdam 17世紀オランダ絵画が圧巻の「栄誉の間」 Photo: Iwan Baan, Rijksmuseum Amsterdam

3億7千5百万ユーロ(約500億円)という巨額の予算が投じられた改修工事は当初、2008年の竣工を予定していました。ところが、工事請負契約の入札参加者が少なすぎて競争入札が困難になったり、市民から「景観にそぐわない」と批判された研究センターの設計を変更したり、度重なるトラブルによって次第に工期が延長されていきました。ドナルド・デ・レーヴ館長はいかなる困難に直面しても「市民のための美術館」を謳い、何より税金による「国立」美術館であることから、市民からの異議申し立てがあれば聴聞会が開催されます。問題が生じるたびに議論が尽くされ、結局、改修工事には10年もの歳月が費やされました。

斬新なエントランス vs. 安全なサイクリング

自転車論争を経て、エントランスは通路「上」ではなく、ガラス張りの通路「脇」に設置された。Photo: Pedro Pegenaute, Rijksmuseum Amsterdam 自転車論争を経て、エントランスは通路「上」ではなく、ガラス張りの通路「脇」に設置された。Photo: Pedro Pegenaute, Rijksmuseum Amsterdam

なかでも論争を巻き起こしたのは、美術館のエントランスです。建物中央を突き抜ける公道上への移設が発表されると、アムステルダム市南区の地区委員会やサイクリスト協会から抗議が殺到しました。1日に1万3000台を超える自転車がこの通路を利用しており、通路上のエントランスが交通の妨げとなるためです。一方で理想的なデザインを志向するスペイン人建築家アントニオ・クルスとアントニオ・オルティスも譲らず、またしても工事は中断されました。「神が地球を創ったが、オランダはオランダ人が造った」という格言があるように、堤防を築いて国土を拡大してきたオランダ人には、自分たちが国や街を築いてきたという自負があります。公共建築物のプランは市民によって徹底的に議論され、コンペの最優秀案が見送られることも稀ではありません。

悲喜こもごもの10年を詰め込んだ映画

映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』は2014年12月より日本全国で公開され、DVDとしても発売されている。 映画『みんなのアムステルダム国立美術館へ』は2014年12月より日本全国で公開され、DVDとしても発売されている。

平行線をたどる議論に業を煮やしたデ・レーヴ館長が突如辞任するという事態にまで陥るなか、最終的には建築家側が譲歩する形で事態は収拾されました。平凡なデザインへの変更を余儀なくされた建築家たちは「民主主義の悪用だ」と呆れ果てた様子でしたが、それほどにオランダ人の市民意識は高いのです。10年間にわたる大騒動の顛末は、ウケ・ホーヘンダイク監督によってドキュメンタリー映画にまとめられました。『みんなのアムステルダム国立美術館へ』には、修復工事にまつわるバトルのみならず、絵画の修復や美術館運営の会議など、通常は見ることのできない美術館の舞台裏も映し出されています。アムステルダム国立美術館を訪れる方、オランダの街づくりに興味のある方は、ぜひ鑑賞してみてください。

関連リンク

アトリウムのカフェやミュージアムショップは入館料なしで利用可能 アトリウムのカフェやミュージアムショップは入館料なしで利用可能

◆アムステルダム国立美術館 
Rijksmuseum Amsterdam
https://www.rijksmuseum.nl

◆『みんなのアムステルダム国立美術館へ』
HET NIEUWE RIJKSMUSEUM
http://amsmuseum.jp/

◆建築家クルス・アンド・オルティス 
Cruz y Ortiz
https://www.cruzyortiz.com/

 

※記事は掲載日時点での情報であり変更されている可能性もあります。ご了承下さい。(掲載日:2017/07/04)
※旅行前には必ず、外務省の海外安全ホームページで訪問地の安全情報についてご確認ください。
※この記事はガイドレポーターの取材によって提供された主観に基づくものであり、記事は取材時時点の情報です。
 提供情報の真実性、合法性、安全性などについては、ご自身の責任において事前に確認して利用してください。
エイビーマガジンについて

 

キーワードで記事検索

検索