- テメル華代
- オランダ在住。アムステルダムの美術アカデミーで絵画を学び、現在はイラストレーターやグラフィックデザイナーとして活動中。16年の在蘭経験を活かして、ダッチデザインやアムステルダムの隠れ家的スポットなど、オランダを満喫するためのローカルな情報をお届けします。
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7カ国全ての家がオランダの国家遺産 (rijksmonument) に登録されている歴史的建造物
アムステルダムの中心地、ミュージアム広場から西へ徒歩6分ほどのルーメル・フィッセル通り (Roemer Visscherstraat) では、ヨーロッパ7カ国の建築物を一度に鑑賞できます。高級住宅街にある閑静な通りの中ほどまで歩みを進めると、オランダの典型的な赤レンガ造りの建物に続いて、異国情緒あふれる7軒の家が並んでいます。各々がヨーロッパの国を代表する建築様式で建てられ、オランダ語で「7カ国の家」を意味する「Zevenlandenhuizen ゼーヴェンランデンハウゼン」と呼ばれています。
右から順にドイツ、フランス、スペインの家
Zevenlandenhuizenは通りの東側から、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、ロシア、オランダ、イギリスの順に並んでいます。ドイツの家はロマン主義の様式で、最上階の小さな塔や、木造の出窓には古い街並みの雰囲気が漂います。フランスの家は、ロワール地方の古城に倣った建築様式で、大きく開放的な窓のある落ち着いたデザインです。七カ国のうち一際目をひくのは、ピンクと白のストライプに塗られたスペインの家です。かつてイスラム王朝が栄えた、グラナダのヴィッラをイメージしてデザインされました。隣のイタリアの家は、新古典主義のパラッツォ(イタリアの宮殿)をイメージしています。
右から順にイタリア、ロシア、オランダ、イギリスの家
ロシアの家は大聖堂の様式で、十字架を載せたタマネギ型の屋根「オニオンドーム」が目を引きます。オランダの家は意匠を凝らした切り妻屋根のルネサンス建築で、屋根裏部屋の小窓が想像力を掻きたてます。そして最後の一軒、コテージをイメージして建てられたイギリスの家は、三角屋根と大きな煙突が特徴です。Zevenlandenhuizenは住宅やオフィスとして利用されているため内部見学は出来ませんが、唯一イギリスの家だけはホテルとして宿泊できます。周辺にはミュージアム広場やフォンデル公園、ショッピング街のP.C.ホーフト通りもあり、観光拠点としても魅力的です。
それぞれの家にオランダ語で国名が記されている。左上から時計回りに、イタリア、オランダ、イギリス、スペイン、ドイツ、フランス、ロシア。
Zevenlandenhuizenはオランダ人建築家チェールト・カウパース (Tjeerd Kuipers) により1894年に設計されました。発注者のサミュエル・ファン・エーヘン (Samuel van Eeghen) は政治家としても名を馳せた裕福な商人で、若い頃よりオランダ領東インドに滞在するなど国際的な見識もありました。旅行好きだったファン・エーヘンの、遊び心にあふれた発注を好機として、建築家・カウパースは七カ国への敬意と憧れをもってヨーロッパ建築の潮流を再現しました。19世紀の建築家にはエキゾチシズム、つまり遠方へのロマンチックな憧れがあったのです。閑静な通りの一角、わずか40mに凝縮されたヨーロッパの街のエッセンスを、ぜひ鑑賞してみてください。
オランダのルネサンス様式ファサード(左)とロシアのオニオンドーム
◆七カ国の家
Zevenlandenhuizen
Roemer Visscherstraat 20, 22, 24, 26, 28, 30, 30A
◆クエンティン・イングランドホテル(イギリスの家)
Quentin England hotel
http://quentinengland.com/
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