人間が定住する最北端の地

地の果てや世界のはずれってなんとなくロマンを感じませんか。わたしは数年前に「人間が定住する最北端の地」を旅しました。目指した先は、北極圏のバレンツ海に浮かぶ「スバールバル諸島」の最も大きな島、スピッツベルゲン島です。国としてはノルウェーの領土であり、人間が定住するようになったのは、20世紀に入って石炭の採掘が始まってからのこと。陸地の6割は氷河に覆われ、また65%が国立公園や保護区として保護されています。スヴァールバル条約によって、日本人はビザなしで好きなだけこの島に滞在することができ、また働くことも可能なんです。

人間が住む最北端の島 北極圏の秘境「スバールバル諸島」(前編) 人間が住む最北端の島 北極圏の秘境「スバールバル諸島」(前編)

ホッキョクグマが出没する町

トロムソからの飛行機は、スピッツベルゲン島最大の町ロングヤールビェンの空港に到着します。空港では巨大なホッキョクグマの剥製が迎えてくれました。この島にはホッキョクグマが棲息し、冬にはロングヤールビェンの町にも出没するのだとか。町から出る場合は、銃を持参するか、銃を持ったガイドが同行することが義務づけられています。町はずれには「ホッキョクグマ警告(「注意」じゃなくて警告です)」の看板もありました。わたしは、クマとのニアミスはありませんでしたが、ホステルのすぐそばで野生のトナカイたちに遭遇しました。

ツンドラ・氷河トレッキングに挑戦

初日は氷河トレッキングに参加しました。ガイドのお兄さんはライフルを肩から下げ、猟犬を連れています。「犬のほうが早くクマに気づくからね」と言われると、夏は町の近くには出てこないといってもやはりちょっと緊張しますね。まずはツンドラの原野をしばらく歩きます。ツンドラの大地はコケむしていて、踏むとスポンジのようにふわふわしていました。氷河の裾に着いたら靴にアイゼンを装着して、慎重に氷河を踏みしめ、登っていきます。氷河を渡りきると岩場に出て、そこからは眼下の谷と海の向こうの山々が見渡せました。

スバールバルライチョウを見る

北極圏の島ですから、豊かな緑はありません。ツンドラの大地にひっそりと高山植物の小さな花が咲き、湿地にはワタスゲが一面に生えていました。海の向こうの山々の眺めも、緑のない茶色く険しいものです。雄大で人を寄せつけない厳しい風景でした。同じツアーに参加した日本人の女性は雷鳥の研究をしていて、スバールバルライチョウが見たくてやってきたとのこと。なんとラッキーにも遠くにその姿を見ることができました。原野の中の小屋でお昼の休憩となり、ガイドさんが用意してくれた熱いお茶と昼食をいただきながら、この島での暮らしについての話を聞きました。(後編に続く)