観光客でにぎわう夏と闇の中の冬

氷河トレッキングで我々を案内してくれたガイドの青年は、ノルウェー本土にある大学の学生で、夏の間だけ島に戻って観光ガイドの仕事をしているのだそうです。休憩した小屋の入り口の柱にはホッキョクグマがつけた爪跡が残っていて、その大きさと深さに恐怖を感じました。野生のシロクマに遭ってみたいなあと気楽に考えていましたが、彼らの恐ろしさを知らぬよそ者の戯言でした。島の主要産業は石炭採掘から観光業にとって代わり、夏は観光業に携わる人々と旅行者でにぎわいますが、冬は人も減りホテルも一部閉まってしまうのだとか。一日中真っ暗な辺境の町の冬は、どれだけ寂しく厳しいことでしょう。

人間が住む最北端の島 北極圏の秘境「スバールバル諸島」(後編) 人間が住む最北端の島 北極圏の秘境「スバールバル諸島」(後編)

ロシア人の町バレンツブルグへ北極海クルーズ

バレンツブルグは人口約1000人のロシア人の集落で、ロングヤールビェンから約50kmの海沿いにあります。二つの集落は陸路で結ばれておらず、海から行くしか手段がありません。そこでバレンツブルグを訪ねる北極海クルーズツアーに参加し、観光船に乗り込みました。北極海の雄大な風景を楽しみつつ、2時間後にバレンツブルグに到着、上陸します。海沿いには炭鉱の巨大な工場がありました。高台にある町までは木の階段を上っていきます。町は、カラフルに塗られた木造の小さな家が点在するロングヤールビェンとは雰囲気が異なり、レンガ造りの古めかしい重厚な建物が並んでいました。

時が止まったかのようなロシアの町

そこはまるで、ソ連時代から時が止まってしまったかのような不思議な空間でした。広場にはいまだに大きなレーニン像が立ち、モスクワオリンピック時に建てられたスポーツセンターには五輪のマークがついています。公共の建物の壁には、共産ソ連時代を髣髴とさせる、労働者を発揚させるプロパガンダの大きな絵が残っていました。休憩で入ったホテルのカフェはなんと料金がルーブル表示でしたが、ノルウェークローネで払うことができました。う〜ん、このホテル次回絶対に泊まってみたいです!!バレンツブルグからの帰りには、海に流れ込むエスマルヒ氷河に接近して、大迫力の風景を満喫しました。非常に興味深く面白いツアーでした。

巨大な氷河に再訪を誓う

この島の白夜は約4ヶ月。北緯78度の夏は、太陽を見ただけでは時刻がわかりません。ヨーロッパ本土の白夜は夜中になればそれなりに薄暗くなりますが、ここでは午前1時でも昼と変わらない明るさでした。ロングヤールビェンは、島最大の町といってもちょっと散歩したら全部回りきれてしまうほどの小さな町でしたが、この秘境辺境の島が、こんなにも大自然と文化的な魅力に溢れたところとは思ってもみませんでした。ノルウェーからの定期便も出ているので、ひとりでも多くの人にこの最北の町を訪れてほしいと思います。本土に戻る飛行機から島を覆う巨大な大氷河に再訪を誓いつつ、島を後にしたのでした。