「シンドラーのリスト」の工場がミュージアムに

1994年に映画「シンドラーのリスト」が公開されました。第2次世界大戦中、ナチスドイツによるユダヤ人の大量虐殺(ホロコースト)が行われていましたが、ポーランドのクラクフに琺瑯工場を持つドイツ人実業家でありナチ党員のオスカー・シンドラーが、チェコに買い取った軍需工場に必要な労働力だという名目で、1100人以上のポーランド系ユダヤ人を連れて行く許可を得ます。連れて行くユダヤ人の名前を連ねたのが“シンドラーのリスト”で、これによって収容所送りを阻止したという実話を描いた映画です。今回、映画の舞台となったシンドラーの工場がミュージアムとなって公開されたと聞き、足を運んでみました。

「シンドラーのリスト」が書かれた工場で、当時のユダヤ人たちの人生に思いを馳せる 「シンドラーのリスト」が書かれた工場で、当時のユダヤ人たちの人生に思いを馳せる

アクセスはトラムが便利

シンドラーの工場はその後別の工場として使われていましたが、映画の公開によって修復・改装が行われ、2010年に「クラクフ歴史博物館(旧オスカー・シンドラー琺瑯工場)」としてオープンしました。工場はクラクフの旧市街スタレミャストの南に位置する、ユダヤ人のゲットーがあったポドグジェ地区にあります。中心部から3番か19番のトラムに乗り、川を渡って最初の停留所で降ります。周囲は住宅地でちょっとわかりにくいのですが、地元の人は当然ながらみんな知っているので、尋ねれば教えてくれます。工場の前には観光バスが停まっているのですぐわかるでしょう。

展示内容はナチス占領下のクラクフ

映画の世界を再現したり、シンドラーその人に迫る展示がなされているのだろうと思いつつ進んでいくと、全然違っていました。“Krakow Under Nazi Occupation 1939-45(ナチ占領下のクラクフ1939-45年)”というテーマで、ほとんどが、ナチスドイツ軍に侵略を受けた、当時のポーランドで起きた生々しい歴史の記録でした。当時の衣類や身の回りの品々が展示され、理髪店や収容所の部屋などが再現してあります。また、シンドラーのリストによってユダヤ人に発行されたビザも展示されていました。

アウシュビッツと合わせて訪れたい

シンドラーについての展示は、隣にいたグループのガイドが「これがシンドラーです」と指したパネルの中の小さな写真と、再現されたシンドラーの執務室くらいです。また、他のホロコーストミュージアムでは見たことがないくらい、ナチスやヒトラーについての展示物が多いのに驚きました。クラクフにナチスが台頭し、市井のユダヤ人が追い詰められていった過程を、時系列的に追うことができる展示でした。訪れる東洋人の姿はほとんどなく、西洋人ばかりで、若者が真剣に展示を見ているのが印象的でした。ヨーロパではいまだに真摯に考え続けられるテーマなのでしょう。アウシュビッツ収容所だけではなく、クラクフに来たら是非訪れてほしいミュージアムです。