ポーランドの古都で日本が思い出される?

ポーランドを歩いていて、観光地の団体旅行以外に日本人を見かけることはめったにありません。なにしろ日本人の年間訪問者数が5万人ほど(2015年、外務省調べ)という少なさですから、当たり前ですね。そんな中で、ふとした時に日本語や日本文化を目にすると、不思議な気分になります。南部の都市クラクフで、「どこへ行こうか」とガイドブックを見て、目を惹かれたのが「日本美術・技術博物館“マンガ館”」という名称でした。

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1994年に完成した魅力ある建築

ヴィスワ川沿いを歩いて行くと、ヴァヴェル城と日本美術・技術博物館が、川を挟んだ対岸に向かい合うように建っています。ヴァヴェル城の濃密で壮麗な建築群と、川岸に打ち寄せるさざ波のように有機的な形状の博物館の建物を、いっぺんに見ることができます。この風景は、まるで数百年の時間の旅をしているみたいです。博物館の建物は、磯崎新氏の設計。有機的なフォルムもうなずけます。

カフェテラスからヴァヴェル城が正面に(ガラス越しなので暗めですが) カフェテラスからヴァヴェル城が正面に(ガラス越しなので暗めですが)

ヴァヴェル城側からも、ぜひ眺めてみてください

この辺りのヴィスワ川のほとりはひたすらのどかなので、こんな未来的な建築は似合わないと思えそうなものですが、不思議となじんでいます。その理由は、周囲の景観から飛び抜けてしまわないように低層建築にして、背の高い木々で周りを囲むことでさらに目立たなくしているからだと思いました。ヴァヴェル城側から見ると、まるで恥ずかしがって木々を集めて隠れているみたいにも見えるんですよ。それでいて、入り口に立つと細部に至るまで美しい建築なのです。

ヴァヴェル城から臨むと、このようにひっそりと…… ヴァヴェル城から臨むと、このようにひっそりと……

“マンガ”の表す意味を知りましょう!

この博物館は、日本美術愛好家として有名だった美術コレクターの故フェリクス・“マンガ”・ヤシェンスキ氏のコレクションを収めています。ミドルネームの“マンガ”は「北斎漫画」にちなんで名乗っていたそうです。博物館の名前だけ聞くと、日本のアニメやマンガに関する展示物があるのかと早とちりしそうですよね。浮世絵や木彫りの作品、刀、着物といったものが収蔵品の中心です。また、映画監督の故アンジェイ・ワイダ氏が、この博物館の設立に多大な貢献をしました。ワイダ作品のポスターも見られました。

日本語表記がちょっとうれしい! 日本語表記がちょっとうれしい!

常設展の他、企画展のレベルが高い!

私が訪れた時には、ちょうど「水石(すいせき)」の展覧会が開催されていました(会期終了)。水石とは、自然石を自然の凝縮した姿ととらえ、室内で鑑賞する日本の文化です。えらそうに書きましたが、私もこれほどのコレクションを一度に見たのはまったく初めてのことでした。まさか遠いポーランドの地で、膨大な水石を見ることになるなんて、ヴィスワ川沿いを歩いていたわずか数分前までは考えてもいませんでした。この博物館は定期的に展覧会の入れ替えをしていますから、リピートするのもいいと思います。建築も展示品も、ともにすばらしい博物館ですよ! 日本に改めて触れる、おもしろい機会になると思います。

天皇皇后両陛下のご訪問記念プレートも 天皇皇后両陛下のご訪問記念プレートも