「たかが門」ではないのです。そのわけは?

新市街からクラクフ旧市街へ入るには、北のゲートから入るルートがおすすめです。どこから入っても同じ……ではありません。それは、北のゲートだと「フロリアンスカ門」という由緒ある門をくぐっていくからなんです。この門は白っぽい天然石でできていて、1300年ごろに造られたそうです。高さは33.5メートル。朴訥で、派手な装飾はありませんが、一目で歴史を感じさせる門なんですよ。旧市街を取り囲んでいた城壁は、今ではほとんどなくなってしまいました。しかし、フロリアンスカ門は当時のままなのです。

この下が門になっています この下が門になっています

守護聖人の中でも、火に関係する守護聖人です

フロリアンスカという名前は、カトリックの聖人フロリアヌス(フロリアン)から名付けられています。フロリアヌスは3世紀末に現在のドイツ・バイエルン東部で活躍した軍人でした。彼は消防隊も組織していました。ローマ皇帝ディオクレティアヌス帝の時代に、キリスト教信仰を捨てなかったという理由で、拷問を受け処刑されました。死後に煙突掃除人、消防士、石けんの釜炊き人の守護聖人となりました。聖フロリアヌスは、特に中央ヨーロッパで盛んに信仰されています。

フロリアンスカ門のそばには、円形の砦バルバカンもあります フロリアンスカ門のそばには、円形の砦バルバカンもあります

戴冠式やパレードもここを起点とする、由緒ある門です

私も(ホテルがここから近かったことも幸いして)、クラクフ滞在中はしばしばこの門を通っていました。歴代のポーランド国王、各国の国王や要人も、皆この歴史ある門をくぐって市内へ入っていったのです。そんな重要な門ですが、いざ行ってみると、門の中は「こんなに小さいのか」と驚きます。門をくぐる時は、誰もが等しくフッと視界がせまくなって暗がりを歩き、やがて視界がぱっと開けると、そこはもう中世のような街並み。この門からなら、本当に手軽にタイムトラベルができるんですよ!

門の遠景。下部は意外と小さいでしょう。 門の遠景。下部は意外と小さいでしょう。

周辺の散策とセットで、往時の風景を想像しよう

旧市街に入る門が、火事から町を守る聖フロリアヌスの名前を冠しているのは、町の人々の願いの表れであったでしょう。門を見上げると、大きな赤い旗を掲げて立つ、フロリアヌスの全身像があるのが分かります。ちょっと高くて遠いのですが、頑張って見てみましょう。そのまなざしは遠くを見つめ、門の上から、クラクフの安全を今も守り続けているかのようです。この辺りは、露天のギャラリーや絵描きさんがずらりと並び、のんびりした雰囲気がすてきですよ。

朝の風景。今日もせっせと絵を並べます 朝の風景。今日もせっせと絵を並べます