ショパンの心臓が納められている教会へ

「ショパンの音楽のルーツを知る旅へ その3」からの続きです。ワルシャワに、ショパンにまつわる名所はいくつもありますが、そのハイライトともいえる、新世界通りの先に建つ美しい教会「聖十字架教会」に行ってみましょう。この教会には、ショパンの心臓が安置されているのです。とはいえ、実物の心臓を見ることはできませんが、貴重なひとときとなることは間違いありませんよ。

見学時間が短めなので要注意! 見学時間が短めなので要注意!

建築としての価値が高い教会です

聖十字架教会は日本では「教会」と呼び習わされていますが、2002年に「大聖堂(バジリカ)」になりました。新古典主義の建築様式で、堂内の真っ白な壁が印象的です。真っ白な壁に金色の祭壇がひときわ映え、荘厳な雰囲気に圧倒されますよ。ポーランドの教会は名建築の宝庫ですが、ここもスッキリとしていながら自然と厳粛さが醸し出されている、すばらしい宗教空間になっていると感じました。

堂内は新古典主義建築の粋 堂内は新古典主義建築の粋

望郷の念が極まったショパンの、最後の願い

さてショパンの心臓は、正面入り口から入って左側の一番手前の柱の下に埋められています。柱には目印となる碑が取り付けてあります。ショパンは20歳でポーランドを出てから、祖国へ戻ることなく、39歳にパリで病没します。ポーランドを心から愛していたショパンは、自分の心臓だけでも祖国へ戻してほしいと願っていました。ショパンの死を看取った姉が、心臓をコニャックに漬けてワルシャワへ持ち帰ったそうです。今の感覚ではちょっと異様な感じがしますが、19世紀当時には、確かにその人が亡くなったという確認のために、葬儀の前に心臓を取り出すということがしばしば行われていました。

これが目印となる碑です これが目印となる碑です

「まるで昨日取り出したばかりのように完璧」な保存状態

2014年、心臓の保存状態を確認するために、70年ぶりに柱から掘り起こすという調査が実施されました。結果は、「完璧な保存状態」だったそうです。心臓の写真の公開やDNA鑑定などはなく、ただ保存状態を見るためだけの極秘調査だったようです。

美しい空間にうっとり…… 美しい空間にうっとり……

人間“ショパン”に、最も近づける瞬間かもしれません

ショパンというと、あれほどの美しい曲を作った、歴史上の超人的な人物……私たちは、普段そんなふうに、ショパンのことをどこか遠い存在として認識しているかもしれません。この教会を訪れてみると、ショパンが私たちと同じように“肉体を持って生きてきた人間だった”という当たり前のことを実感します。激動の人生を生きたショパンの、肉体のすぐそばに立ってみることは、身の引き締まる思いにとらわれる体験となるでしょう。教会はあくまで宗教施設ですから、マナーを守って静かに見学しましょう。(その5に続く)