ハイテクを駆使した見事な展示室

「ポーランド・ユダヤ人歴史博物館」の後編です。私たちは、「ユダヤ人」と聞くと、近現代史に目を向けがちですよね。ナチス・ドイツの迫害を経て戦後から現在に至り、イスラエルという国家の、世界の中での立ち位置。しかしユダヤ人と定義される人々は、そのはるか昔からヨーロッパ世界に存在していたのです。この博物館では、近現代史だけでなく、1000年以上昔から、ユダヤ人がポーランドの地へやってきて暮らしていた様子を紹介しています。これが非常に美しくて素敵な展示なんです。絵本のページをめくるような、美しいパネルあり、スタンプコーナーあり。子供も熱心に見ていました。

どの世代の人も夢中で見学! どの世代の人も夢中で見学!

大きな見どころのひとつ、「シナゴーグ」

近世から近代のコーナーでは、17世紀のシナゴーグ(ユダヤ教の会堂)を再現したスペースで、ほんものではないのに、その荘厳な美しさに圧倒されました。また、当時の街角や家を実物大で再現した箇所もあります。ユダヤ人の書斎、商店、駅、チケットブースなど、この地でいかにユダヤ人が勤勉に、堅実に暮らしていたかが窺い知れる展示が続きます。

ため息が漏れる、美しいシナゴーグ ため息が漏れる、美しいシナゴーグ

1000年を駆け抜ける、時間の旅

そしていよいよ、時代は二つの世界大戦の時代に。明るくて夢のようにきれいな展示のムードから、暗く硬い展示へと移り変わっていきます。まるで別の博物館へ来てしまったかのようです。ここの展示は資料も膨大で、文章量も多く、立ち止まって解説を読む時間がどんどん長くなっていくコーナーですよ。また、ユダヤ人の家庭や学校生活、戦後ポーランドが社会主義国家となってからの展示も、豊富な写真やポスターが興味深いのです。本当に大きくて、凝った展示が続くので、一周したあとは1000年の長い旅をしてきたような気分になりますよ。

プロパガンダ的な展示も見せ方がうまい! プロパガンダ的な展示も見せ方がうまい!

ユダヤ人としてのプライドが形になった博物館

一番最後は、またちょっとおもしろいコーナーです。この博物館を建てるのに寄付をしたユダヤ人の名前がずらりと並び、「やはり財を成すユダヤ人は多いのだなあ」と感心してしまいます。ユダヤ人自らが作った博物館ですから、当然、ユダヤ人側から見た歴史であり展示方法です。その視点で見ていくことが大事ですね。

熱心に感想を書く見学者 熱心に感想を書く見学者

「自分は何者か」という問いさえ生まれてきます

また、すべて問いかけの形の英文が、映像で流れています。「ユダヤの文化は、誰が誰のために作ったのか?」「ポーランドのユダヤ人にとって、未来はあるか?」「ポーランドでユダヤ人として在ることには、どんな意味があるか?」……答えはなく、ただただこのような問いかけだけが、静かに流れていくのです。この映像を見たあと、見学者がここを訪れた理由をカードに書きます。すると出口近くの壁に、今書いたばかりのカードが映し出されるのです。潤沢な資金と、民族への強い愛によって建てられた博物館。世界の歴史を知り、自分のアイデンティティーにも目を向けるチャンスともなる、すばらしい展示ですよ!

潤沢な資金で、往時の街角を再現したような展示に 潤沢な資金で、往時の街角を再現したような展示に