軽い気持ちで雪山トレッキングへ

紫のじゅうたんのようにクロッカスの花が谷を覆うという風景が見たくて、はるばるやってきましたが、初日の午後は雨。クロッカスはつぼみを硬く閉じたままです。なんと雨は夜中に雪に変わり、翌朝勇んで外を見たら一面の銀世界でした(泣)。せっかく来たのだからと、山小屋のスタッフにトレッキングできるかどうか尋ねると、私が行きたかったルートはすべて足場が悪いので今日は無理だと言われ、ひとつだけ、山小屋の後ろの小さいピークに登るルートを教えてもらいました。積もった雪が心配でしたが、「積もったのは5cmくらいよ、楽ちんよ! (It's very easy!)」と笑顔で見送られました。

野生のクロッカスの花で紫に染まるという、ポーランドの谷を目指した早春の旅(その3) 野生のクロッカスの花で紫に染まるという、ポーランドの谷を目指した早春の旅(その3)

苦労のあとの雪山の絶景に言葉を失う

標識によるとピークまでは約100分、前方に小さく登っていく人の姿も見えます。歩き始めて森の中に入っていくと、確かに新雪は5cmくらいですが、その下に硬くなった雪が膝くらいまで積もっていることがわかりました。おまけに前を行く人はクロスカントリースキーの板を背負っていて、どうやら雪山の熟練度が違い過ぎるようです。「戻るなら今だ」と自分に言いつつも、なぜか前に進む私。結局、90分後にはピークに到達しました。そこから見たのは、谷を取り囲む2000mを優に超える山々でした。音のない白とグレーの幽玄の世界。今から下山する不安も忘れ、しばしその絶景に見とれていました。

奇跡の風景にやっと出合えた!!

そして最終日の朝、起きたら奇跡の快晴です!!谷に日が差して気温がぐんぐん上がり、雪が解けていきます。雪の中のクロッカスのつぼみが次第に緩み、白い大地に紫のクロッカスが映えて、その奥には真っ白な雪山が聳え、そして真っ青な空が広がります。雪が降ったことがむしろ幸運だったといえる美しさ。朝食を食べてチェックアウトした頃には、さらに雪が解け、クロッカスが完全に姿を現していました。眺めのいいところで腰を下ろし、この奇跡のような風景を見つめます。クロッカスたちは、目に見える勢いで次々に花弁を開いていきます。なんてかわいいんでしょう!!

大自然が見せる「ひとときの美」を求めて

1時間ほど、そうして花のひとつひとつと谷全体の風景を愛でていましたが、急に雲が出てきて太陽が隠れてしまいました。午前中の数時間だけ、自然の織り成す舞台を見せてもらったかのようでした。花やオーロラ、日食など、自然を求めての旅は難しいですよね。自分の旅程と見たかったものの時期がぴったり合うかどうかわからないし、天候にも大きく左右されます。でも、その「ひとときの美しさ」に出合えた時の喜びもまたひとしおなのです。さあて、次は何を見に出かけるとしましょうか。