未完成に終わった修道院の建設

ポルトガル中部の街バターリャにあるバターリャ修道院(勝利の聖母マリア修道院)は、世界遺産にも登録されている堂々たる修道院です。1388年に建設が始まり、16世紀まで200年も続きましたが、ついに最後の礼拝堂が完成することはありませんでした。その間に、国王が7人も替わっています。建設当初はゴシック様式で造られましたが、延べ15人の建築家が携わり、建築家が替わるたびにマヌエル様式やルネサンス様式などが導入されていきます。ゴシックの尖塔を見ると、バルセロナのガウディの建築とも似通っています。

長い年月をかけて建設され、修復され続けた世界遺産バターリャ修道院 長い年月をかけて建設され、修復され続けた世界遺産バターリャ修道院

なぜ建設は中断されたのでしょうか?

この修道院はポルトガルの後期ゴシック様式建築の傑作といわれていますが、それが最も顕著にわかるのが未完成に終わった礼拝堂でしょう。1473年に着工し、入口が完成したのが1509年。回廊が完成したのが1533年。その後も建設は続きましたが、天井が未完成のまま工事は中断されました。当時の国王ジョアン3世がリスボンのジェロニモス修道院の建設に力を注ぐために建設を中止したといわれています。19世紀に一時放棄され修道院は荒廃しましたが、1840年に国王フェルナンド2世が修復を開始し、その修復は20世紀初めまで続きました。どれをとっても息の長い建設作業です。それにしても、入口だけで36年もかかるとは、いったいどんな入口なのでしょうか。

ポルトガルの建設技術を培った修道院建設

礼拝堂入口は石造りの門になっています。そこにはマヌエル様式の細かい彫刻がびっしりと彫り込まれており、そのあまりの細かさは繊細なレース模様のようです。触れば壊れてしまいそうな繊細さ。インドに行った方ならジャイナ教の寺院を連想するかもしれません。息を呑むほどの細かさとはこのことでしょうか。植物のモチーフなどを見ると明らかにイスラームの影響を受けたものと思われます。この修道院の建設事業によって、それまでポルトガルにはなかった建築技術や建築様式が導入されたといいます。そしてそれがさらに発展して、独自の様式になったそうなので、未完成ながらスケールの大きな修道院だったといえるでしょう。