ポルトガルで超一級のイスラム美術を見る

ヨーロッパの美術館には、個人のコレクションが元になっているものが多くあります。ということは、その蒐集家の趣味や目的によって、コレクションの中身も系統づけられることになります。ポルトガルのリスボンにある「グルベンキアン美術館」には、トルコのイスタンブール生まれのアルメニア人石油王、カルースト・グルベンキアンが世界各地で集めた美術品約6000点が収蔵されていますが、なかでもイランやトルコのイスラム美術が非常に充実しています。彼のモットーは「世界で一番いいものだけ」だったそうで、そのおかげで私たちは今、リスボンにいながらにしてイスラム美術の超一級品を見ることができるという恩恵に与ることができるわけです。

ヨーロッパで楽しむ東洋美術 その2「リスボン・グルベンキアン美術館」 ヨーロッパで楽しむ東洋美術 その2「リスボン・グルベンキアン美術館」

垂涎の「世界で一番いいものだけ」が揃う

外観はシンプルなコンクリートの現代建築ですが、一歩中に入ると異国情緒満載です。イスラム美術の広い展示室には、トルコやペルシャの大判の絨毯が床に敷かれ、美しい陶器や織物、タイルがゆったりとしたスペースを取って飾られています。14世紀から15世紀のイランのエナメル彩のガラスのコレクションは見応えがあり、トルコのタイルや陶器の絵付けの美しさも、イスタンブールのトプカプ宮殿にあるものに引けを取りません。私はいつも美術館や博物館では「この中でひとつだけもらえるとしたらどれがいいか」考えながら見学するのですが(笑)、ここのイスラム美術の品々はどれも「世界で一番いいもの」だけあって、とてもひとつだけ選ぶことはできません。

見逃せない日本の蒔絵コレクション

他にも古代エジプトやギリシャ・ローマに始まって、キリスト教美術、西洋の絵画から中世の家具、アジア美術まで、グルベンキアンがこれはと思ったものは何でも、という感じで展示されています。古代エジプトのコレクションは、巨大な石像やミイラはありませんが、小さくて品のいい像などを上手に集めていて、趣味がいいなあと思いました。日本の江戸時代の蒔絵の印籠、硯箱のコレクションもあり、蒔絵の細やかな細工が見事です。海外の美術館だからこそ出合える日本の美術品の逸品ですね。個人でこれだけの超一級品を集められるなんて、どれだけのお金と力を持っていたんだろうと、ついつい下世話なことまで考えてしまいました。

もうひとつ見逃せない「国立古美術館」の南蛮屏風

大航海時代に世界中を股にかけ、日本とも縁の深い国ポルトガル。リスボンにある「国立古美術館」にも見逃せない珠玉の東洋美術のコーナーがあります。ポルトガルと交流のあったインドや中国の家具や美術品、陶器も見事ですが、日本の南蛮美術の数々、なかでも狩野内膳の手による南蛮屏風は必見です。ポルトガル人が日本に上陸した後の場面と思われ、宣教師、アフリカ大陸からの召使い、ラクダや象まで、その特異な容貌や風俗、異国の珍しい文物などを活き活きと描いたこの作品から、当時の日本人の驚きが伝わってきます。ポルトガル語のビオンボ(Biombo)が「屏風」となって日本に根づいた縁をこの屏風絵から感じることができます。