ポルトガルで最も有名だった風刺画家が作りだした陶器

ポルトガルにはキャベツの形をした有名な皿があります。この原型を作ったのがラファエル・ボルダロ・ピニェイロ(1846〜1905)。ポルトガルで最も有名な風刺画家、造形作家といわれています。リスボンにこのピニェイロの美術館があります。美術館にはピニェイロが新聞に描いた風刺画の他に、陶芸作品がずらりと展示されていて、それらは野菜類、魚介類、カエルなどを陶器にしたものです。それを見ると、アールヌーボーやジャポニズムの影響を受けたものであることがわかります。いったいなぜピニェイロは、野菜や魚を陶器にしたのでしょうか。

キャベツの形をした奇妙な陶器を見に、ポルトガルのピニェイロ美術館へ キャベツの形をした奇妙な陶器を見に、ポルトガルのピニェイロ美術館へ

なぜピニェイロはキャベツの皿を作った?

ピニェイロは1885年に、このような陶器の制作を開始しました。ヨーロッパでは19世紀中頃から古い様式のリバイバル運動が盛んでした。様々な様式が復活し、ミックスされて流行したのです。アールヌーボーもジャポニズムもその潮流の中にあり、ピニェイロもその影響を受けた一人でした。彼が工房を構えたライーニャという村では、キャベツや魚といった自然物をそのままの形で写し取る伝統工芸が存在していました。それらがすべて合わさって、このようなキャベツの陶器を作るにいたったといわれています。ピニェイロの作品は、彼自身が制作した作品と、彼がオリジナルを作り、工房がそれを元に生産したものがあります。現在販売されているキャベツの皿は、もちろんそういった工房作品です。

普段使いができるピニェイロのキャベツの皿

リスボンの北にあるライーニャには、今でもピニェイロの工房があり、そこで多くの陶器が販売されています。ピニェイロの死後100年たっても、それらは作り続けられ、日常的に使えるほどの価格で販売されているのです。有名なキャベツの皿は1枚500〜1000円程度です。ヨーロッパの陶磁器といえば、マイセンなどのように白く上品なものが多いのですが、ピニェイロの陶器はその対極にあるといってもいいでしょう。なにしろキャベツがそのまま皿やお椀になっているのですから、見方によっては子どものおもちゃのようです。しかし、そこには日本の芸術から影響を受けた歴史が刻まれ、今も引き継がれ、そして人々の日常品になっているのです。