ユーラシアの果てで旅を終えた沢木耕太郎

無期限の長い旅をしていると、「いつどこで旅を終えるか」という決断をいつかしなければなりません。そして、この決断が非常に難しいのです。日本に帰る不安、現実の社会に戻る不安、旅を続けたい欲求・・・。バックパッカーのバイブルとして読み続けられている沢木耕太郎の「深夜特急」。この中で、沢木も同じように旅の幕をどこで下ろすか悩みます。沢木はポルトガルのリスボンで「サグレス」という名のビールを飲み、「サグレス」の意味を知ってサグレス岬を目指し、そこにたどり着いたところでようやく『旅の終わりの汐どきを掴まえ』ました。そこから彼はパリを経てロンドンに向かいますが、彼の中での旅の終点はロンドンではなく、ユーラシア大陸の果てのサグレス岬だったといっていいでしょう。

沢木耕太郎著「深夜特急」の終点、ユーラシア大陸の果てサグレス岬 沢木耕太郎著「深夜特急」の終点、ユーラシア大陸の果てサグレス岬

ユーラシア最西端よりも「地の果て」感たっぷり

ユーラシア大陸の最西端は、リスボンの西30kmにあるロカ岬です。リスボンからのショートトリップ先として、また大西洋に落ちる夕日のスポットとしても人気があります。岬の崖付近は整備され、「ここに地果て、海始まる」というポルトガルの詩人ルイス・デ・カモンイスの詩の有名な一篇が刻まれた記念の塔が立っています。岬の観光案内所では「最西端到達証明書」なるものを発行してくれ(ちなみに発行枚数世界一は日本人だそうです)、なんというか、観光地のひとつという感じで「地の果て」感に欠けるのです。その点、サグレス岬はアクセスが今ひとつ、見どころがそんなにないという欠点を武器に、茫々たる地の果て感を激しく漂わせていて、岬に立つと「いやーずいぶん遠いところまで来てしまったなあ」と感じずにはいられません。

そして旅人はサグレスを目指す

「深夜特急」を読んで初めてサグレス岬を知ったという旅人は多く、この本に魅了された旅人たちが、自分でユーラシアの「果て」を見るためにサグレス岬を訪れています。岬の先には、16世紀に建てられた要塞があります。大航海時代にエンリケ航海王子がここに航海学校を開きました。また、サグレス岬から北西に6kmのところにあるのがユーラシア大陸最南西端の岬、サン・ビセンテ岬です。もちろんここでは到達証明書は発行されません。もうひとり、ここを訪れた偉大な作家である司馬遼太郎が「街道を行く」シリーズの「南蛮のみちサグレスの小石」の中で、『どの断崖も、ビスケットを割ったような断面である。』と称した断崖絶壁の荒涼とした眺めが目に入るだけです。サグレスの小さな町では、この地方の名物であるシーフードの鍋料理「カタプラーナ」を堪能しましょう。もちろん、お供は「サグレス」ビールで。