外に出て過ごす高齢者たち

スペインに暮らして気づいたことのひとつに、街を歩く、または外で過ごす老人の姿がとても多いということがあります。公園でゲートボールに似たボールゲームに興じるおじいちゃん達や、ひとりで買い物カートを引いて市場に買い物に行く元気なおばあさんだけではありません。ずいぶんとお年を召して体が思うように動かないお年寄りでも、誰かの介添えでゆっくりゆっくり散歩し、近所のバルで朝ごはんを食べたり、通りのあちこちに設置してあるベンチに座って、家の中にこもらずに外で過ごしているんです。スペイン人の老後は、今のところ恵まれているように感じます。

幸福度が高そうに見えるスペインの老後、これからは厳しくなりそうな気配 幸福度が高そうに見えるスペインの老後、これからは厳しくなりそうな気配

高齢者が住みやすい街づくりと医療費無料

バルセロナの街は、高齢者の生活を守るため、薬局、雑貨屋、食料品店、理・美容院など日常生活に必要な店が一定の小さなエリアに配置されるようにつくられ、そのために、永年に渡って町内で続いてきた小さな個人商店を擁護する姿勢を打ち出しています。生活必需品である食料品の消費税率は低く抑えられ、市場や商店では、野菜ひとつ、生ハム1枚から買うことができます。また、スペインでは公的社会保険に加入していれば医療費は無料で、薬も処方箋があれば市場価格の数%ほどの自己負担で済みます。お年寄りが暮らしやすい体制が整っているんですね。

孤独な老人が少ない

同じヨーロッパでも、ドイツや北欧は一人暮らしの高齢者の割合がとても高いですが、スペインはいまだに家族と暮らすお年寄りが多いです。孫の学校への送り迎えをする祖父母の姿を、朝夕、学校の前でよく見かけます。一人暮らしをしていても週末には子供や孫たちがやってきて一緒に食事をし、3ヶ月の長い夏休みの間、共働きの夫婦が子供たちを祖父母に預けて面倒を見てもらったりと、家族と過ごす時間が多いのは、お年寄りにとって幸せなことでしょう。また、中南米からの移民を住み込みのお手伝いや介護に雇っている人も多く、孤独なお年寄りが少ないのがスペインの社会です。

将来への不安

未曾有の不景気にあえぐスペイン。失業率は25%を超え、一方で少子化高齢化が進み、年金や社会保険料を負担する人口が過去最低になりました。日本と同じ問題を抱えているんですね。医療費が無料というのはまだ変わりませんが、薬代は上限を設けて負担を増やす方向にあります。また、財政再建には年金制度の改革が避けられないとして、2011年に現在65歳の年金需給年齢を67歳に引き上げることを決定したスペインですが、これだけでは足りず、政府は支給額も変更する制度を提案しています。これから厳しくなっていきそうなスペイン人の老後ですが、家族との絆、人とのつながりはまだまだ失われないだろうと思います。