世界遺産のガウディ建築の中で、もっとも行く人が少ない?

バルセロナというとサグラダ・ファミリアが思い浮かぶ人が多いとおもいます。ご存知、アントニ・ガウディの未完の教会ですが、バルセロナには他にも多くのガウディ建築があります。そのうちの代表作7つが「アントニ・ガウディの作品群」として世界遺産に登録されています。サグラダ・ファミリア、グエル邸、グエル公園、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、カサ・ビセンス、コロニア・グエル教会地下聖堂ですが、今回紹介するのは、そのうち、最も行く人が少なさそうなカサ・ビセンスです。「バルセロナに行ったことがあるけれど知らないなあ」という人もいるかもしれません。というのも、この邸宅は長い間、個人の所有物で一般公開されていなかったからです。世界遺産登録は2005年でしたが、残念ながら観光客は外から眺めるだけでした。それが2017年から内部が一般公開されるようになったのです。

住宅地の中に突然あるアラブ風の建物。タイルの組み合わせがきれい 住宅地の中に突然あるアラブ風の建物。タイルの組み合わせがきれい

30代のガウディが手がけた初期の作品

カサ・ビセンス(ビセンス邸)は、タイル業者のマヌエル・ビセンス・ムンタネルの依頼で、1883年から1888年にかけてアシャンブラ地区に建てられました。場所は現在、高級ブランドショップが並ぶグラシア通りの北端から1.5kmほど、ガウディの代表作の一つであるカサ・ミラからは徒歩15〜20分ぐらいの住宅街の中にあります。ガウディはまだ30代前半の頃で、一人前の建築家になって最初に手がけた主要建築作品と言っていいでしょう。ただしこの家の建築様式は、当時のバルセロナで流行っていた「ムデハル様式」というイスラム建築の影響を受けた様式をアレンジしたもので、のちのガウディ作品とはかなり趣が異なる建物です。

曲線や曲面はあまり使わず、組み合わせで変化を出している

カサ・ビセンスは、のちのガウディ作品らしい曲線や曲面を多用した建築ではなく、主に直線や平面が使われています。ただし、各所に自然をモチーフとしたデザインが取り入れられているのが、ガウディらしいところ。外側から見てみると、モノトーンのタイルを交互に組み合わせたり、タイルにオレンジ色の花がデザインされていたりと、レンガやタイルを効果的に使っているのがわかります。鉄柵も単純な直線ではなく、シュロの葉をイメージしたものです。建物は、地下1階、地上3階建てで、寝室や共用スペース、物置、使用人の部屋などが各階に配置されています。建物は直線を多用していますが、ガウディは建物が平面的にならないように、角の部分には変化をつけているので、よく見てくださいね。(後編に続く)