バルセロナ旧市街にある世界遺産・グエル邸

バルセロナでは、サグラダ・ファミリアで知られるアントニ・ガウディの建築物が観光の目玉ですが、そのうちの代表作7つが「アントニ・ガウディの作品群」として世界遺産に登録されています。市内にあるのが、サグラダ・ファミリア、グエル邸、グエル公園、カサ・ミラ、カサ・バトリョ、カサ・ビセンス、郊外にあるのがコロニア・グエル教会です。さて、今回紹介するのはその中のグエル邸です。ガウディの中では「初期作品」に含まれるこの住宅は、ガウディの最大のパトロンでもあった実業家エウゼビ・グエルのために建築した邸宅です。すでにガウディは、グエルの別邸であるフィンカ・グエルを手がけていました。これで信頼関係を結んだのでしょう。1885年、グエルはバルセロナの中心部に造る、自分の邸宅の設計をガウディに依頼します。ガウディ33歳の時です。

グエル邸の屋上には、さまざまなデザインの煙突が並んでいる グエル邸の屋上には、さまざまなデザインの煙突が並んでいる

今でいう“再開発”? さびれていた地域に邸宅を

グエルは旧市街のランブラス通りに近い区画の建物3つを購入しました。本当はもっと面積を広げたかったようですが、周囲の買収に成功しなかったようです。購入した建物を取り壊し、建築が始まったのは1886年。敷地はそれほど広くはなかったため、グエルは所有していたいくつかの建物をつなぐようにして設計を依頼しなければなりませんでした。グエルにはこの邸宅をどうしたいかというビジョンがありました。当時、バルセロナの華やかなエリアは新市街のアシャンプラ地区で、旧市街は廃れていました。しかしそのエリアで育ったグエルは、かつてのにぎわいを取り戻したいと考え、この家をそのきっかけにしようとしたのです。また当時、グエルはバルセロナの経済界の第一人者でした。そのため、この邸宅は彼の家というだけでなく、人目を引くモダンな建築で、社交サロンにもなるような建物にしたかったのです。

グエル邸の造りはこうなっている

建築期間は1886年から1888年にかけてですが、内装の装飾が完成したのはその数年後です。竣工した1888年にはバルセロナで万博が開かれ、グエルはその期間中の完成にこだわりました。また、建築中の1886年には向かいにエデン劇場というミュージックホールができたので、その俗っぽさに対抗するために、グエル邸の外観は道徳的な雰囲気を打ち出そうとしました。建物は6層構造で、地下室は厩舎、地上階は玄関ホールと馬車置き場。中2階と主階は社交フロアで、ここに礼拝堂やサロン、食堂が配置され、友人たちを招いてのコンサートなどのイベントも行われていました。2階は家族の寝室のための階です。その上には使用人たちのスペースの屋根裏部屋がありました。屋上はガウディらしさが全開した、ユニークな形をした煙突の森になっています。(その2に続く)