ヨーロッパにあったイスラーム帝国

数あるヨーロッパの美しい建築物の中で、スペインのグラナダに建つアルハンブラ宮殿は、明らかに異彩を放っています。それはキリスト教の世界であるスペインに建つイスラームの建築だからでしょう。現在の世界地図を見ると、地中海を挟んで、北側はキリスト教の国々、南側はイスラーム教の国々に色分けされていますが、紀元7世紀ごろに栄えたイスラーム帝国のウマイヤ朝は、最盛期には現在のスペインとポルトガルがあるイベリア半島の大部分をその支配下に置いていました。

グラナダのアルハンブラ宮殿はレコンキスタの名残り グラナダのアルハンブラ宮殿はレコンキスタの名残り

レコンキスタとは何?

「レコンキスタ」とは、イスラーム帝国に支配されていた土地を、元のキリスト教の地に取り戻す運動。「国土回復運動」、または「再征服運動」と訳されています。約800年続いたイベリア半島のイスラーム勢力は、レコンキスタの結果、徐々に南に追いやられてゆき、最後に残ったのがグラナダのアルハンブラ宮殿でした。時は1492年、キリスト教勢力は、2年間の包囲戦を経て、砦でもあったこの宮殿をとうとう陥落させ、レコンキスタを完成させました。

美しすぎて(?)破壊できなかった宮殿

それまで、レコンキスタの結果キリスト教の支配地域になった土地では、イスラームの建物は破壊されたり、キリスト教風に造り変えられたりしました。例えば同じくレコンキスタの結果、キリスト教勢力の支配下に置かれたコルドバでは、モスクとして建てられた建物がカトリックの大聖堂に改造されています。ところがレコンキスタの集大成である、アルハンブラ宮殿については、イスラーム色を色濃く残す内部の細かな彫刻やモザイクの装飾をはじめ、庭園や噴水など、ほとんどのものがイスラーム時代そのままの美しさを残しています。

昼も夜も見学できる美しい宮殿

世界遺産に登録されている宮殿は、外から見ると無骨な砦そのもの。しかし中に入るとその印象は一変します。浮彫細工に漆喰を塗って彩色を施した装飾や、鮮やかな色彩とタイルで飾られた壁面の繊細さには驚くことでしょう。また、日が暮れた後は、ライトアップされた姿に心を奪われます。十字軍遠征の時代から、キリスト教とイスラーム教の対立は、ある意味現在も続いていると言っていいかもしれませんが、この宮殿を訪れると、心底この建物が破壊されなくてよかった、と感じるはずです。