町のど真ん中に秘かに存在する修道院

マドリードの観光局が主催する、旧市街のウォーキングツアーに参加したときのことです。日本語ペラペラのスペイン人ガイドに連れられて下町を歩いているとき、一軒の建物の前で止まりました。何の変哲もない玄関扉のある建物ですが、扉の横に小さく貼り紙がしてありました。なんでも、ここは女性の修道院で、修道女達は外部の誰とも会わず、この中だけで死ぬまで信仰のために生きていくのだとか。貼り紙には、修道女たちがここで作っているお菓子を販売している旨が書かれてありました。

旅でみたさまざまな宗教と女性の信仰のかたちについて (その3.キリスト教)   旅でみたさまざまな宗教と女性の信仰のかたちについて (その3.キリスト教)  

絶対に姿を現さない修道女たち

ツアーに参加していたひとりがそのお菓子を是非買いたいと言い、他にも希望者が数人いたので、ガイドがインターフォンで今日も売っているかと聞いてくれます。クッキーがいくつかあるとのことで、扉のオートロックが開けられ、中に入りました。小さな中庭を建物が囲むような造りで、その一角の窓に回転棚があります。こちらの希望を言うと棚がくるりと回ってお菓子が出てきました。そこにお菓子代を乗せてまた棚を回して支払いが終了。窓の向こうの部屋に人の気配はするのに、とうとう姿を見ることはありませんでした。

死ぬまで外に出ない暮らしとは

建物はそれ程広くないように思え、修道女が何人いるのかはわからないけど、この狭い世界の中だけで祈り、瞑想し、お菓子を焼いて一生を終えるのか、と思うと、どれだけの覚悟が要るのだろうと考えてしまいました。覚悟なんて要らないのかもしれませんね。ただ深い信仰心さえあれば。ガイドの説明では、彼らは当然買い物にも出られないので、御用聞きの人が代わりに街で用を足してきてくれるのだそうです。また、もし病気になったら医者が往診でやってくるのだそうです。

日本にもある修道院

こうした厳格で隠遁的な修道会を「観想修道会」といい、厳律シトー会やカルメン会がその代表的な修道会で、日本にもいくつか修道院が存在します。バター飴で有名な函館のトラピスチヌ修道院もそのひとつですね。マドリードの修道院は、今の時代なかなか若い女性が入ってこないので高齢化が進んでいるのだそうです。都会の中に隠れているかのような小さな修道院の祈りが、いつか途絶えてしまうのはちょっと悲しいことのように思えました。オレンジの風味のクッキーは素朴な味わいでとても美味しかったです。