ベラスケス、エル・グレコと並ぶ、スペイン3大画家のひとり

スペインの3大画家を知っていますか? 一般的には印象派以前の19世紀中頃までの古典的な画家を指すようで、ゴヤ、ベラスケス、エル・グレコが挙げられています。時代順では、エル・グレコ(1541〜1614)、ベラスケス(1599〜1660)、ゴヤ(1746〜1828)の順で、エル・グレコはスペイン全盛期、ベラスケスはスペインが下り坂に少し入ったあたり、ゴヤの時代はスペインの没落期といえます。王家で言えば、ベラスケスはスペイン・ハプスブルグ家の時代、ゴヤはスペイン・ブルボン家の時代でした。今回は、その三大画家の一人ゴヤを、彼が生きた時代背景やその作品と合わせて紹介していきたいと思います。

『自画像』(プラド美術館収蔵) 『自画像』(プラド美術館収蔵)

ゴヤの下積み時代

仕事柄ゴヤの絵は知っていましたが、ゴヤ本人がどんな人だったか、最近まであまり興味を持ったことがありませんでした。夜や背景が暗く沈んだ黒い絵が多いなというくらいです。しかしたまたま、ゴヤの作品の記事を書くことになり、いろいろ調べ、参考に映画『宮廷画家ゴヤは見た』を見たりしていくうちに、彼が波乱万丈の生涯を送っていたことを知りました。ゴヤが生まれたのは1746年。スペイン北東部の町サラゴサ(マドリードとバルセロナの中間ぐらいにある町)の近郊です。14歳の時から4年間、サラゴサの画家のもとで修行したゴヤは、1774年、28歳の時にマドリードへ出て、王立タペストリー工場で下絵描きに従事します。その時代に力をつけたゴヤは、1786年、40歳のときに当時の国王カルロス3世付きの画家に昇進。3年後の1789年には、後を継いだ国王カルロス4世の宮廷画家にのぼりつめます。

アメリカ独立革命、フランス革命が起きていた時代

当時はどんな時代だったのでしょうか。18世紀はそれまで全盛を極めたオランダが没落し、イギリスとフランスが強くなった世紀です。イギリスから始まった産業革命は各国に広まり、それまでいなかった産業資本家などの市民層を生み出していきます。啓蒙思想が広まり、教会の権威は弱まり、科学が最新のトレンドになります。その一方で絶対王政の国がほとんどなので、民衆と国家の軋轢が強くなっていた世紀でもありました。ゴヤがタペストリー工場で働いていた1776年にはアメリカで独立革命が起き、ゴヤが宮廷画家に就任した1789年にはフランス革命が勃発しています。スペイン国王カルロス3世はそんな時代にうまく立ち回り、啓蒙専制君主としても評価が高かったようですが、その後を継いだカルロス4世は、「レスリングが好き」「鈍感で馬鹿正直」という評判で、政治能力ゼロ。結婚するも、完全に王妃の尻に敷かれていたようです。(その2に続く)