古代にすでに生まれていたモザイク美術

モザイクと聞くと、みなさんは、不適切な画像を隠すチェック模様を思い浮かべるかもしれません。しかし元々は、紀元前4000年頃、メソポタミア文明の時代に始まったとされる装飾美術のことを指します。石や貝殻などを小さく割ってピースを作り、それをモルタルなど接着剤でくっつけていくのです。最初は円柱の表面に連続模様を貼りつけるなどしていました。それがギリシャ時代になって、床を装飾するようになります(舗床モザイク)。すると神話や自然を題材に使った、より絵画的な装飾が主流になっていきます。その後、ビザンチン時代に入ると、金ぴかのラメのようなモザイクが流行りますが、ここではギリシャの次のローマ時代のモザイク美術を紹介します。

海外のすごいモザイク美術の美しさにハッとする〜チュニジアのバルドー博物館 海外のすごいモザイク美術の美しさにハッとする〜チュニジアのバルドー博物館

チュニジアはかつてはカルタゴの本拠地。カルタゴの将軍は?

イタリアのポンペイの遺跡を訪れたことのある方は、遺跡の中に美しいモザイクが残されているのを覚えておいでかと。そんなモザイクを一堂に集めたのが、チュニジアのバルドー博物館なのです。首都チュニスの郊外にあります。2015年3月、痛ましいテロ事件が起き、日本人を含む観光客が犠牲になったことは、まだ記憶に新しいでしょう。それでも博物館は見事に復活し、警備をより厳重にして、再開しています。しかしなぜ、チュニジアでローマ時代のモザイク美術なのかと思われるかもしれません。実は、チュニジアはかつてはカルタゴと呼ばれ、ローマ時代にローマと覇権を争った強国だったのです。アルプス越えで有名なハンニバルは、そのカルタゴの将軍です。第二次ポエニ戦争で、ローマを滅亡の淵にまで追いやりましたが、破れてしまいます。そんなカルタゴなので、かの地には、ローマ時代の遺跡が多く残され、繁栄を誇ったが故に、モザイク美術も素晴らしいものがあるのです。

現代にも見当たらない、その生き生きとした表現

ギリシャ神話の英雄、オデュッセウスが船に乗って苦難の旅をする様子、美しい模様の中に、動物や鳥たちを描いたもの、ボクシングの様子、ワンポイントで百獣の王ライオンが描かれたもの、魚エビやタコやイカ、海産物の紹介のようなもの、ぶどうの蔓が唐草模様のように複雑にデザイン化されたものなど、のちに時代の織物のデザインの原型になるものばかりです。いえ、原型どころか、生き生きとした表情や、構図の素晴らしさは、現代でもちょっと類を見ないような、溌剌さと明るさに見ちているのです。僕はこのモザイク美術の数々を初めてここで見た時に、印象派の絵画を初めて見た時のような震えを覚えました。見ていて幸せになるような美術なのです。今でなくてもいいです。いつか、必ずや足を運ばれることをおすすめします。