- 吉田 久美子
- スペイン(バルセロナ)在住。秘境・辺境、苦難を伴う旅が好きな、ヘタレなアウトドア派です。旅した国は80か国以上。世界のお酒と居酒屋をこよなく愛し、現在はガイドとして、日本のお客様にスペインのバル文化の素晴らしさをお伝えすべく、連日連夜バルを渡り歩いています。モットーは『人生は旅なのだ!!』です。
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一杯のコーヒーは特別のおもてなし(その2)-トルコのコーヒー文化と伝統-
最近は家庭でも小型のエスプレマシンが人気のようですが、友達の家を訪ねたときに手間をかけて淹れてくれたコーヒーが出てくると、手間がかかっている分だけ馥郁たる香りも美味しさも5割増しくらいに感じられます。そこにもてなしの心を感じるからでしょうか。もとは修行僧の飲み物だったというコーヒーが大衆の社交の場に広まったのは、16世紀のイスタンブールでのことでした。カフェの発祥の地はトルコだったのですね。この、トルコに400年以上受け継がれてきた伝統的なコーヒーの文化は、2013年に世界無形文化遺産に登録されました。
トルコを旅している間に、いったい何杯のチャイをご馳走になったことでしょう。絨毯屋の店先でちょっと話し込んだら、すぐにチャイの出前が届きます。安宿にチェックインしたら「まあ座れ」とチャイが出てきたこともありました。チャイは濃い目の紅茶のことで、トルコの人は角砂糖を入れて一日に何杯も飲みます。そんなトルコに「一杯のコーヒーにも40年の記憶がある」という諺があり、大切なお客様を正式にもてなすときはコーヒーが出されます。チャイのもてなしが温かく気取りのないものだとしたら、コーヒーのもてなしはちょっと贅沢で特別な感じといったらいいでしょうか。
トルココーヒーの淹れ方は、まず細かく挽かれたコーヒーの粉と砂糖を、ジェズヴェという専用の片手鍋で煮立てます。沸騰してきたら火を弱め、浮かんできた泡をカップに入れます。ふきこぼれる寸前に火を止めて、コーヒーをカップに注いだらできあがり。ポイントは泡です。表面が泡いっぱいになっているのが上手に淹れたコーヒーとされ、昔は嫁入り前の娘のたしなみでした。男性が自分の家族を連れて女性の家に結婚を申し込みに行くと、必ず求婚された女性が淹れた泡いっぱいのコーヒーでもてなします。「こんなに上手にコーヒーも淹れられますよ」という花嫁の自己アピールだったのですね。
注がれたカップの中には当然煮出したコーヒーの粉も入っているので、コーヒーの粉が沈むのを待って、その上澄みを飲みます。さて、トルコの女性のお楽しみは、コーヒーを飲んだ後の、底に残ったコーヒーの粉を使っての占いです。カップの上にお皿をかぶせ、願い事を思いながらひっくり返します。カップを開けると、底の粉がお皿に流れ落ちています。このときに粉が流れた模様から運勢を占うのが「コーヒー占い」で、これもれっきとしたトルコのコーヒー文化のひとつなのです。イスタンブールのイスティクラル通り周辺には占いのお店が多いので、みなさんも観光の間にコーヒー占いに挑戦してみてはいかがでしょうか。
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