古代地中海世界で培われた「モザイク美術」

古代の地中海世界では、モザイク画の製作が盛んでした。漆喰を塗った壁に描かれるフレスコ画は時代と共に退色していきますが、石や色ガラスを使って作られるモザイク画はいつまでも鮮やかな色で、現代でも私たちに感銘を与えてくれます。このモザイク画の製作はローマ時代が全盛期ですが、ビザンツ帝国やその影響下にあったベネチアや南イタリアの中世の地中海諸国でも12世紀頃まではよく作られていました。しかし絵を描くよりもコストも手間もかかるため、次第に作られなくなっていったのです。私はこのモザイク画のファンなのですが、その私がイスタンブールに行くたびに必ず行く博物館があります。かれこれ、7、8回は訪れているのではないでしょうか。それが今回紹介するカーリエ博物館です。

700年前のモザイク画が姿を現す、カーリエ博物館 700年前のモザイク画が姿を現す、カーリエ博物館

旧市街の外れに建てられた修道院

このカーリエ博物館は、旧市街の外れのテオドシウスの城壁のそばにあるので、行く人は少ないかもしれません。しかしそれほど有名でないにも関わらず、イスタンブール観光の人気ランキングでは、常に上位に来る博物館です。この建物は6世紀創建のコーラ修道院の付属聖堂で、現在の建物は14世紀のビザンチン末期の改装(増築)のものです。修道院の名の「コーラ」とはギリシャ語で「田舎」「郊外」を意味する言葉。当時はこのあたりは町外れで、田畑が広がっていたようです。また、「カーリエ」もアラビア語で「田舎」を意味する言葉のようです。

塗り込められた絵画が姿を現した

コンスタンティノープルにあったキリスト教会の多くは、オスマン時代になるとモスクに転用され、内部の絵画は破壊されてしまいました。しかしアヤソフィアに一部残るモザイク画のように、ただ塗り込められ、それが近年になって発見されたというものもあります。このコーラ修道院では、16世紀初めにモスクに転用されて「カーリエ・ジャミイ」となると、ミフラーブやミナレットが取り付けられ、聖堂内の絵画はしっくいで塗り込められてしまいました。この聖堂内に絵画が発見されたのは20世紀の半ばのこと。1948年から1958年にかけて注意深く漆喰が取り除かれた後、博物館として公開されるようになりました。こうして、このすばらしいモザイク画とフレスコ画が姿を現したのです。(その2につづく)